【UAE・アルアイン23日(日本時間24日)発】ロシアW杯アジア最終予選B組の日本代表は敵地でUAEに2―0で勝利した。FW久保裕也(23=ヘント)の先制弾とMF今野泰幸(34=G大阪)の追加点で完勝し、W杯出場圏内となるグループ2位をキープした。重要な一戦を制したバヒド・ハリルホジッチ監督(64)は、試合前にさまざまな危機に直面していたが“満点采配”で不安を解消。その壮絶な舞台裏とは――。

 完勝だった。日本は序盤から優位に試合を進めると、前半14分に本田に代わって右サイドで先発したFW久保が右足でネットを揺らして先制。後半7分にはベテランのMF今野が加点し、その後も危なげないゲーム運びで2―0。敵地で過去3分け1敗と勝利したことのないUAEを相手に勝ち点3を積み上げた。

 ハリルホジッチ監督は「日本の美しい勝利だった。しっかりとゲームコントロールして、私の戦術アドバイスをしっかりとリスペクトしてくれた。2~3回は危ない場面もあったが、日本の高いレベルを見せてくれた」とし「W杯に向け、いい道のりだと思っています」と自画自賛だった。

 だが、その舞台裏では苦悩の連続だった。試合直前にMF長谷部誠(33=Eフランクフルト)が右ヒザの負傷で離脱。主将としてまとめ役だったばかりではなく、守備的MFとして攻守の要だった。守護神GK西川周作(30=浦和)も調子が上がらずに、大事な決戦に向け不安が出ていた。

 そんな中、長谷部に代わり約2年ぶり復帰の今野、GKは今年リーグ戦出場ゼロの川島永嗣(34=メス)とベテランを抜てき。今野は得意のボール奪取に加えて得点まで決め、川島も序盤に1対1を防ぐなど好パフォーマンスで勝利に貢献した。指揮官も「パーフェクトなプレーだった」と絶賛した。

 まさに臨機応変な対応で窮地を乗り切ったわけだが、さらに日本サッカー界にくすぶる不満も封じ込めた。今回のメンバー発表に向け「試合に出ていない選手は代表に呼ばない」と宣言したにもかかわらず、所属クラブで出場機会を得られていないFW本田圭佑(30=ACミラン)やFW宇佐美貴史(24=アウクスブルク)を選出した。

 これに日本代表OBは「選手たちが納得しないし、監督への信頼感がなくなる」と疑問視し、Jクラブ関係者も反発。特に好調のMF斎藤学(26=横浜M)やFW小林悠(29=川崎)の選外に批判が噴出した。同関係者は「勝てばいいけど負けたら(不満爆発で)大変かも」と漏らすなど、一触即発の危機だった。

 しかし本田を2試合連続で先発から外し、攻撃陣は昨年11月のサウジアラビア戦で活躍したFW大迫勇也(26=ケルン)、FW原口元気(25=ヘルタ)、FW久保を継続起用した。さらにベテラン勢の力を生かすなど、采配ズバリで快勝。不満を封じ込めるとともに、負ければ再燃しかねない去就問題も抑え込んだ。

 次のタイ戦(28日、埼玉)に向け、ハリルホジッチ監督は「勝たなければUAEに勝利した価値がなくなる。これを続けていけばW杯への門が開かれるだろう」と、6大会連続となる出場権を視野に捉えるなど、ピッチ内外で事態が好転する価値ある勝利となった。