2020年東京五輪サッカー男子代表監督は誰になるのか。日本サッカー協会の西野朗技術委員長(61)は五輪世代となるU―20日本代表が臨む同W杯(5月、韓国)を検証した上で年内に指揮官を選考する方針。すでに監督候補の名前も取りざたされる中、リオデジャネイロ五輪を指揮した手倉森誠氏(49=現A代表コーチ)が急浮上。その意外な理由とは――。

 自国開催の五輪に向けては、Jリーグを3度制覇した広島の森保一監督(48)、2014年に日本人指導者として初の3冠を獲得したG大阪の長谷川健太監督(51)、昨季J1王者でクラブW杯で準優勝した鹿島の石井正忠監督(50)が有力候補と見られている。

 いずれも日本サッカー界で実績を残した名将たちだが、かつて日本代表で背番号10を背負ったJ1磐田の名波浩監督(44)は東京五輪監督について「オレはないよ。代表に興味ないし、そういうタイプじゃない。これまでに結果を出している指導者がいいんじゃないかな」と話し、選考の行方を気にしていた。

 すでに、技術委員会では昨年7月から東京五輪に向けた議論を重ね、従来通りに日本人に任せることを確認している。リストアップ作業も順調に進むが、当面は5月のU―20W杯で日本の戦いを検証し、課題や長所を見極めた上で年内に監督を選任。初陣は来年1月のU―23アジア選手権(中国)になる予定だ。

 そんな中、あるJクラブ監督は「ポイチ(森保監督の愛称)は有力候補なんだろうけど、代表はムリじゃないか。あんな特殊なサッカーやっていたら難しいって。代表をやるんなら地味(堅実なサッカーの意)な指導者じゃないとダメだよ。(手倉森)誠みたいに地味じゃないと務まらないって。東京(五輪)も誠でいいんじゃないか」。

 国際舞台で戦う代表は年間を通して争う国内リーグ戦とは違って短期決戦が多い。確実に勝ち点を積み上げることが重要なため、攻撃よりも守備面の構築がうまい指導者が適任となる。実際に手倉森氏は守備重視の戦略で「最弱世代」と言われたチームをリオ五輪にまで導いた実績があり、Jリーグ監督たちから“指名”を受けたわけだ。

 その一方、サッカー界ではこんな裏事情がささやかれている。代表選手を担当するマネジメント会社の幹部は「長谷川監督は(推定年俸)1億円をもらっているし、森保監督は8000万円。協会は五輪監督にそんな年俸を出せないだろう。年俸が大幅に下がってまでやる監督がいるのか」と、名将たちの就任を疑問視した。

 予算の少ない協会側はかねて五輪監督の低年俸をカバーするためにA代表コーチ兼任としてきたが、それでも国内トップクラスの監督年俸を捻出するのは難しい。男子では52年ぶりのメダル獲得が期待される中、指揮官の選考レースの行方も注目されそうだ。