【スペイン・バルセロナ発】サッカーの欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦第2戦2試合が8日(日本時間9日)に行われ、バルセロナ(スペイン)がホームでパリ・サンジェルマン(フランス)に6―1で勝ち、2戦合計6―5と大逆転で10季連続の準々決勝進出を果たした。欧州サッカー連盟(UEFA)主催の大会で第1戦を0―4で落としたチームが逆転したのは史上初の快挙。

 奇跡が起きた。カンプノウに詰め掛けた9万6000人、テレビを見ていた全世界のファンが歴史の証人となった。味方からの祝福でもみくちゃになった殊勲のMFセルジロベルト(25)は「信じられない。サッカー選手として一番幸せな日になった」と感激し、我を忘れた。

 3週間前の第1戦は敵地パリで完膚なきまで叩きのめされ、0―4の大敗を喫した。CL57年の歴史で、第1戦をこのスコアで負けたチームが第2戦で逆転した例は皆無だが、チームはあきらめなかった。ルイスエンリケ監督は試合前日会見で「歴史とか、そんなのはどうでもいい。私は勝ち進みたい。相手が4点入れたのなら、我々は6点取ればいい」と前向きさを失っていなかった。

 逆襲に燃えていたFWルイス・スアレス(30)も同じ思いだった。「サッカーに不可能はない。これは歴史をつくるチャンスなんだ」と強気の姿勢が先制点を生む。前半3分、ゴール前で相手のミスを見逃さず、頭で押し込んだボールはDFにクリアされたかに見えたが、ゴールラインを割ったと判定され、まず1点。その後も攻め手を緩めることなく、同40分にはMFアンドレス・イニエスタ(32)のゴールに背を向けながらのヒールシュートがDFに当たってオウンゴールを誘い、2点リードで折り返した。

 後半5分、左サイドを突破したFWネイマール(25)が倒されて得たPKをFWリオネル・メッシ(29)が決めて3点目。ところが、同27分に一瞬の隙を突かれてアウェーゴールを与えてしまい、逆転進出に6点が必要となったことで万事休すと思われた。

 そんな重苦しい空気を振り払ったのがネイマール。同43分、距離があった直接FKを右足でゴール左隅に突き刺し、3分後にはPKを決めた。これでスコアは5―1。それでも勝ち抜けにはあと1点が必要とあって、アディショナルタイム(AT)3分を経過してからはGKテアシュテゲンまでゴール前に上がって攻め込んだ。

 執念が実ったのは、提示されたAT5分まであと15秒。ネイマールがゴール前に絶妙のロビングを上げると、守備ラインの間隙をついたセルジロベルトが左足で合わせて大逆転劇は幕を閉じた。

 奇跡の足がかりを作ったネイマールは「パリで起きたことは説明できない。これがサッカー。今日起きたことも同じ。今は祝う時だ」と興奮を隠しきれなかった。新たな歴史を築いたバルサに対し、ぼうぜんと引き揚げたパリSG。サッカーの魅力と怖さが凝縮された一戦だった。