鹿島のワンダーボーイ候補に“帝王学”が伝授される。18日に行われた富士ゼロックススーパーカップ(日産)で、昨季J1王者の鹿島は3―2で浦和に快勝。決勝ゴールを奪ったFW鈴木優磨(20)はハリルジャパンでもリストアップされる注目株だが、大型補強で出場機会すら危ぶまれている。そんな中で名門クラブが模索する大器の育成策とは――。

 昨年のJリーグチャンピオンシップやクラブW杯での大活躍はやはり本物だった。鈴木は2―2で迎えた後半38分、相手のバックパスミスを逃さず、素早く詰めて左足で強烈なシュート。同20分からの途中出場にもかかわらず抜群の決定力を見せつけた。

「(相手のミスを)狙っていた」としてやったりで「ゴールする感覚はある。それが点につながっている」と自信をみなぎらせる。新シーズンもプレシーズン戦で5戦5発と絶好調。勢いそのままに今季最初の公式戦でチームにタイトルをもたらした。

 20歳の若武者にはバヒド・ハリルホジッチ監督(64)も注目しており、すでに代表候補の大枠に入っている。クラブも大きな期待をかけており、今季からFW大迫勇也(26=ケルン)ら歴代エースがつけてきた背番号「9」を与えられた。

 とはいえ、今季の鹿島は大補強を敢行。特に攻撃陣はJ1で実績のあるFWペドロジュニオール(30)やMFレオシルバ(31)、さらに元ブラジル代表FWレアンドロ(23)まで獲得。現エースのFW金崎夢生(28)やFW土居聖真(24)ら昨季までのレギュラーも健在で、スタメン争いはシ烈を極める。事実、浦和戦もベンチスタート。今季も昨年と同じように“スーパーサブ”の役割もちらつく。

 だが、石井正忠監督(50)の考え方は違う。「例えばサイドハーフでも使えるし、いろいろなことができるから(起用の)内容もワイドになる」という起用プランを思い描いている。これまでのような最前線の位置だけでなく、中盤の各ポジションも含め周囲と様々な連係を試していく考えで、金崎やペドロジュニオールとの“共存”にも前向きだ。

 首脳陣の狙いは、鈴木に多様性を持たせることにある。プレシーズン戦でも複数ポジションで起用。意図をくんだ鈴木も「右でも左でも、下がってもどこでも結果を出せるようにしたい」と意欲的だ。

 今季はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の戦いもある。そんな中で鈴木はサブ扱いではなく、一流選手の中でフル回転を求められる。「全てのタイトルを取りたい」という目標を実現して満足するのも試合に出てこそ。鹿島に根づく「勝者のメンタリティー」を吸収し、ワンダーボーイは一気に飛躍を遂げる。