天才少年を巡ってシ烈な“大争奪戦”が勃発か。FW久保建英(15=FC東京U―18)は昨年Jリーグ最年少デビューを果たし、注目が集まっている。日本サッカー協会は5月にU―20W杯(韓国)を控えるU―20代表をはじめU―17、U―18と各カテゴリー代表でフル回転させる方針だが、クラブ側は慎重に育成計画を描いており、両者の間で激しい綱引きが展開されそうだ。

 強豪バルセロナ(スペイン)の育成部門出身の久保は昨年11月に中学生ながらJリーグ(J3)でデビューした逸材。昨年9月のU―16アジア選手権では同代表として大活躍し、W杯出場権獲得に貢献した。2017年はU―17代表として10月のU―17W杯(インド)に臨む予定だ。

 一方で、久保は20年東京五輪のメーン世代となるU―19代表に飛び級で招集。昨年末のアルゼンチン遠征に参加した。今年はU―20代表として5月の同W杯に挑むが、内山篤監督(57)が「やれるとかやれないじゃなくて、やれると思っている。非常にいいものを持っている」と、5大会ぶりに出場する同W杯の秘密兵器に指名した。

 さらに、1月に発足したばかりのU―18日本代表の影山雅永監督(49)が「下の年代でも、実力があるいい選手ならばどんどん引き上げていきたい」と久保の招集に意欲を示している。となれば、世代別代表だけで3チームを掛け持ちし、それぞれの強化合宿や海外遠征、各大会に参加する可能性がある。

 ただ、異例の招集が続けば、当然故障のリスクが高まる。FC東京でも昨年はU―18の久保をトップチームに登録。プロのJ3に参戦するU―23チームでプレーさせた。しかし体格的には成長途上だ。周囲と比べて技術は上だが「課題はまだまだある」とFC東京の佐藤一樹U―18監督(42)が話すように、出場機会を制限しながら体力強化を図っている段階。日本サッカー界の宝と考えているからこそ、潰さないように石橋を叩いて渡っているのだ。

 各年代の代表を掛け持ちし、フル回転で“促成栽培”を目指す代表側とは対照的。昨年久保が飛び級で代表招集された際にFC東京が故障のリスクを指摘したものの、協会スタッフが「そう簡単にケガはしない」と半ば強引に押し切った経緯がある。今後の代表の過密日程を考えれば、両者の間で激しいせめぎ合いになることは必至だ。

 18日に行われる「ネクストジェネレーションマッチ」では、日本高校サッカー選抜と対戦するU―18Jリーグ選抜の一員として、中学生で唯一選ばれた。シーズン前から引っ張りだこの状況に不安は募るばかりだ。