【霜田前技術委員長が振り返る日本代表激動の7年(5)】日本サッカー協会の技術委員長を務めた霜田正浩氏(49)がロシアW杯アジア最終予選を戦う日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(64)に対する批判について語った。

 ――ハビエル・アギーレ氏(58)の契約解除後、後任探しに入った

 霜田 まあ大変でしたね。報道ではいろいろな指導者の名前が出ていたが、会っていない人もいた。でも実際に交渉したのはハリルホジッチさんだけ。最初からマシンガントークだったけど。

 ――その指揮官は感情が豊か過ぎ。サッカー界からも反発が出ている

 霜田 確かに当たりもきつい部分はある。日本に対し、上からと思われる視点で発言するので僕も複雑な気持ちになった。選手もストレスを抱えかねないので、監督と話したが「そう思われたとしても事実を言っただけ。真実をベールに隠しても日本のためにならない」と…。耳触りのいい言葉を言うだけが良い監督ではないなって。アギーレさんも言っていたことで、そこでつながった。

 ――でも選手からも不満の声は絶えない

 霜田 選手も大変なときはあった。だからアレルギーを取り除きたかった。監督をサポートするため、選手やスタッフに「きつい言い方もするけど、本当に日本サッカーを強くしたいと考えて監督は言っている。悔しい思いをするときもあるかもしれないが(要求を)できるようになれば日本サッカーは強くなれるから」と伝えて回った。

 ――カウンターを狙う縦に速い攻めの戦術がチーム内外から疑問視

 霜田 本大会を見据えている部分もあるが…。戦術を一つに決める必要はない。ポゼッションでブラジルW杯を勝てなかったわけで(戦術の)選択肢は多いほうがいい。それに監督はポゼッションを「やっちゃいけない」とは言っていない。日本人は監督の指示通りにやってしまう傾向がある。それで単調になり「日本らしくない」「連係がない」と言われた。

 ――それにどう対応し改善するのか

 霜田 うまく使い分ければいいだけ。監督に「日本人はマジメだから10のことを伝えると8は聞いてしまう。だから選手への伝え方を変えたらどうか」と提案。(昨年10月の)オーストラリア戦前に「状況に応じ(速攻とポゼッションを)使い分けなさい」と言うようになった。それで選手もリラックスでき(勝利した同11月の)サウジアラビア戦につながった。

 ――最終予選では世代交代も進んでいる

 霜田 主力が試合に出られなくなり、パフォーマンスと体調のバランスをどう考えていくか。「国内組を使え」との声も聞くけど、そういう問題でもない。(本田)圭佑(30=ACミラン)や(香川)真司(27=ドルトムント)は先発から外れたがサブで終わる選手ではない。再び先発に返り咲くか。そこは楽しみにしている。

 ☆しもだ・まさひろ 1967年2月10日生まれ。東京・豊島区出身。都立高島高を卒業後、ブラジルにサッカー留学し88年にフジタ工業(現J2湘南)入り。引退した93年に大塚製薬(現J2徳島)でコーチに就任。数々のクラブで指導者や強化担当を歴任。2009年に日本サッカー協会入りし、10年から技術委員。14年9月に技術委員長に就任した。16年3月に組織再編でナショナルチームダイレクター。長年日本代表をサポートしてきたが、同年末で退任した。170センチ、63キロ。