昨季Jリーグ史上最年長のMVPに輝いたJ1川崎の元日本代表MF中村憲剛(36)が、新シーズンを前に今季の野望を語った。個人的にはうれしい“タイトル”を獲得した昨季だったが、悲願となっているクラブ史上初タイトルには手が届かずじまい。今季はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)も含め「公式戦5冠」制覇を目指し、負の歴史に別れを告げる覚悟だ。
昨年、史上最年長36歳でのMVP受賞が決まったJリーグアウォーズから42日。受賞直後に浸っていた祝福ムードに幕を下ろした中村は、新たに始まるシーズンに向けて気持ちを高ぶらせている。MVPの看板を背負って臨んだ天皇杯決勝(1月1日)ではJ1鹿島に敗れて、またもや準優勝。初タイトル奪取への思いは一層強くなった。
「タイトルに向けて頑張りたい。目標が明確なぶん、やることも明確になっている」という言葉にはリーグ戦、ルヴァンカップ、天皇杯の国内3冠はもちろんのこと、3年ぶりに参戦するACL制覇まで視野に入っている。ACLを制覇すればクラブW杯(12月、UAE)出場権も得られる。昨年12月に鹿島が快進撃を見せて準優勝しているだけに、自分たちもできるという確証を得た。
手応えもつかんでいる。約10年間務めたチームキャプテンをFW小林悠(29)に譲ったことは、その証しだ。先月の宮崎キャンプ中に鬼木達新監督(42)からキャプテン交代を打診されて快諾した。「(昨年)1年やっていて悠の成長を間近で見てきた。もう任せても大丈夫だと思った。まだ何も話していないけど(小林はやるべきことを)わかっている」。小林をはじめ副キャプテンになったDF谷口彰悟(25)やMF大島僚太(24)らもチームを引っ張る自覚にあふれており、チーム全体の精神面の底上げを実感している。
戦力も申し分ない。得点源だったFW大久保嘉人(34)はFC東京に移籍したが、昨季大宮で11得点の元日本代表FW家長昭博(30)らを補強し、昨季より厚みを増している。中村は「力があって入ってきているから、みんな(順応が)早い。それぞれ持ち味を出している」と連係面も順調に進んでいる。
補強の目玉となった家長に関しては「(中村らから)貪欲に吸収して自分の良さを出そうとしている。俺も刺激を受けているし、良さを出せるようサポートしていきたい」と期待を寄せる。また2020年東京五輪世代のMF三好康児(19)ら若手の成長も心強い。
無冠でありながら、あえて「全冠制覇」を目標に掲げたのは決して大風呂敷ではない。今季こそ“シルバーコレクター”の汚名返上なるか。