サッカー日本代表MF清武弘嗣(27)のJリーグ復帰は本意なのか。スペイン紙「マルカ」(電子版)は先月30日までに、スペイン1部の強豪セビリアで構想外となった清武が移籍すると報道。ドイツのヘルタやシャルケ、米MLSのシアトルなども関心を寄せてきたが、ここにきて本人の希望もあって日本復帰の可能性が高まった。欧州志向がありながら、トントン拍子で進んだ今回の日本復帰話。この裏にあるさまざまな思惑とは――。

 清武の日本復帰の可能性を報じた「マルカ」紙によると、獲得に動いているJクラブは古巣のC大阪、神戸、鳥栖。複数の関係者によると、セビリア側は移籍金を600万ユーロ(約7億3000万円)に設定しているが、欧州のクラブからは条件を満たすオファーが届いていない模様だ。

 その一方で、日本からはセビリア側が交渉に応じる額を提示してきたクラブが次々と出現。近年、欧州クラブ在籍の日本代表の中心クラスなら移籍するにしても欧州内という流れだったが、なぜ今回はJクラブが次々と争奪戦に加わったのか。

 今回真っ先に動いたのが神戸だった。神戸は楽天の三木谷浩史会長(51)が個人所有するクリムゾングループから、15年1月に楽天へ株式を譲渡。それを契機にサッカー部門に積極投資する方針を強化し、昨年11月にスペイン1部バルセロナと大型スポンサー契約を締結した。

 さらに「楽天フットボールクラブ」に改称した今年はJ1タイトル奪取が至上命令で、元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(31=ガラタサライ)の獲得に動くなど積極補強を展開。また、今年親善試合を行う予定のバルセロナからもチームの実力やブランド力の強化を図るよう求められており、さらなる改革の“目玉”として清武に白羽の矢を立てた。もちろん、資金は潤沢にある。

 古巣のC大阪も当然黙ってはいない。14年には元ウルグアイ代表で南アフリカW杯得点王のFWディエゴ・フォルラン(37)を獲得して大きな注目を集めたが、その年にまさかのJ2降格。2シーズンのJ2での苦闘を経てようやくJ1に復帰した今季は「ヤンマーから補強についてかなりうるさく言われているようだ」(J1のクラブ関係者)。実質的な親会社といえるヤンマーが失地回復のため実力と人気を兼ね備えた“客を呼べるチーム”の編成を求めている。清武はまさにうってつけの存在だ。

 鳥栖はスポンサー企業である「サイゲームス」の資金力をバックに大物獲りに動いたが、日本代表DF森重真人(29=FC東京)に断られるなど失敗続き。九州出身の清武は今オフの補強の“ラストチャンス”といってもよく、こちらも金に糸目はつけない方針だ。

 こうして資金力のあるクラブが台頭したことで欧州とも張り合えるようになったわけだが、清武側にも日本復帰はメリットがある。清武に近い関係者は「弘嗣は代表のレギュラーを重視している。今は試合に出られない弊害が大きくなってきているから、とにかく出られる環境がほしい。それに(バヒド)ハリルホジッチ監督(64)からは『日本でもしっかりプレーできていれば選ぶ』というアドバイスももらっているようだ」と話す。

 欧州では実現しそうなオファーがなく、米国はリーグのレベルにも疑問符がつき、開幕も3月と遅い。ならば復権の地として最適なのは、慣れ親しんだ日本。親交が深いMF山口蛍(26=C大阪)が昨夏にドイツからわずか半年で古巣に復帰したが代表活動に影響はなく、現在はレギュラーの座をつかんでいる。そうした前例も清武の背中を後押ししたようだ。

 移籍期限は31日。果たして清武はどのような決断を下すのか。