歴史的快挙だ。クラブ世界一を決めるクラブW杯準決勝が14日に大阪・吹田スタジアムで行われ、開催国代表でJ1王者の鹿島は南米代表のナシオナル・メデジン(コロンビア)に3―0で快勝し、アジア勢初となる決勝進出を決めた。Jリーグ勢が幾度もはね返されてきた準決勝の壁を初出場で突破する離れ業。分厚い選手層を誇る“ヤングアントラーズ”が日本のサッカーそのものを変えてしまう勢いだ。

 試合は序盤から技術の高さと素早いパスワークを駆使するナシオナルに圧倒され「0―5で負けてもおかしくなかった」とDF昌子源(24)が振り返るほど防戦一方の展開。だが、GK曽ヶ端準(37)がスーパーセーブを連発し、昌子とDF植田直通(22)のコンビを中心に守備陣が懸命の守りでなんとか踏みとどまる。

 すると前半30分、2分前に左サイドからMF柴崎岳(24)がゴール前に上げたFKの場面がビデオ判定に。ペナルティーエリア内でDF西大伍(29)がFWベリオ(25)に足をかけられる反則があったと判定されPKを獲得した。これをFW土居聖真(24)が冷静に決め価値ある先制点を挙げた。

 後半に入ると、焦るナシオナルを尻目に鹿島が効果的なカウンターを見せ、同38分にMF遠藤康(28)が左クロスからのこぼれ球をヒールで流し込み追加点。さらに同40分には途中出場のFW鈴木優磨(20)がFW金崎夢生(27)からの右クロスに合わせてダメ押しゴールを奪った。

 J1年間勝ち点では3位ながら、チャンピオンシップ(CS)準決勝から這い上がり、ついに南米王者まで撃破する“超下克上”を達成。日本はもちろんアジア勢初となる決勝進出の快挙を果たしたが、快進撃の原動力はJ屈指の若手軍団の選手層にある。

 まずは石井正忠監督(49)が「若い2人が相手の強力FWにしっかり対応できた。今日は非常に良かった」と歴史的勝利のヒーローに挙げた昌子と植田のセンターバックコンビ。ともに日本代表で将来を嘱望されており、特に植田はリオデジャネイロ五輪でも強豪相手に日本人離れした守備の強さを見せ、海外クラブのスカウトからも注目される存在になった。

 攻撃陣も冷静にPKを決めた土居、オークランド(ニュージーランド)との開幕戦で殊勲の同点弾を決めたFW赤崎秀平(25)、ハリルジャパンの秘密兵器として期待されこの日ゴールを決めるなどブレーク中のFW鈴木と多士済々。そして攻守をつなぐ要で10番を背負うのが天才司令塔のMF柴崎だ。25歳以下の実力派がこれだけ揃うのも、日本はもちろんアジアでも鹿島くらい。しかもほとんどが今後の日本サッカーの中心となる“日本代表予備軍”。国際舞台で活躍できる選手を好む日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(64)の目にも頼もしく映ったはずだ。

 大会を通して若手の潜在能力が次々と開花し、ついには強豪の南米王者をも凌駕。選手たちも実感しており、昌子が「充実している」と言えば、土居も「(南米相手に)やれないとはそんなに思っていなかった」と自信を深めている。無限の可能性を秘めた若鹿軍団の勢いがあれば、一気にクラブ世界一まで駆け上がっても不思議ではない。