J1昇格プレーオフの行方 解説者・林氏が大胆分析

2016年11月26日 16時30分

林氏は山口で今季のJ2を見続けてきた

 今年こそ“サクラサク”となるか。サッカーJ2はレギュラーシーズンの戦いが終了し、27日からJ1昇格プレーオフ(PO)が始まる。すでに札幌、清水の2チームが来季のJ1昇格を決め、残る枠はあと1つ。注目はC大阪と京都との「京阪決戦」だ。今季、昇格1年目だったレノファ山口の試合を通じてJ2を見続けてきた「スカパー!」解説者の林晃平氏(38)が大胆分析。昨年のプレーオフで涙をのんだC大阪の悲願は成就するのか――。

 

 今季、私は「スカパー!」で地元・山口の試合の解説をさせていただきました。J2昇格1年目で厳しい戦いになることが予想されましたが、見事に残留。解説の仕事そのものが初めてだったため、山口だけでなく対戦相手となる21チームの分析や現状把握には時間を割きましたし、山口との比較で各チームの長所や短所を発見できた1年でした。

 

 そんな中で迎えるPOですが、その前にすでに自動昇格を決めた札幌と清水について触れておきたいと思います。正直なところ、今季の昇格は昨季J1から降格してきた清水、松本、山形の3チームにC大阪、千葉、そして岡山の争いと見ていました。それだけに札幌の優勝というのは意外でしたが、今季の試合内容は昇格にふさわしい戦いでした。

 

 守備から入る堅実な戦い方こそがJ2を勝ち抜くための絶対条件。札幌はそれを忠実にやり抜きました。得点力があるFW都倉賢(30)、新外国人のMFジュリーニョ(30)の存在も大きかったですが、他の有力チームが勝ち点を伸ばしきれなかったことにも助けられた感があります。これに対して清水はシーズン序盤に出遅れ。J2独特のハイプレッシャーの戦い方に戸惑っていましたが、戦術が固まり始めると状態は安定しました。得点王に輝いたFW鄭大世(32)、FW大前元紀(26)という二枚看板は来季のJ1でも脅威の存在となるでしょう。

 

 この2チームに松本を加えた「3強」の力は抜けていたので、4位C大阪との差は最終的な勝ち点以上のものがあったと思います。そうなるとC大阪は今季のPOも勝ち抜けないという結論に達してしまいそうですが、私は少し違った見方をしています。

 

 今季のC大阪は年間を通して、決していいサッカーをしてきたとは言えません。総得点62はプレーオフ出場4チームで最多ですが、失点46もやはり最多。タレントは揃っているので点は取れますが、守備に難があります。守れないチームはJ2では勝てない。特に10月以降の9試合で完封はわずか2試合。失点も13あります。シーズン直前まで監督が決まらず、大熊清監督が強化部長兼任でスタートするというドタバタが最後まで尾を引いたように思えます。

 

 こんなスタッツのチームですから、準決勝は京都にも十分付け入る隙はあります。プレーオフの規定では90分戦って引き分けの場合、シーズン上位チームの勝ち抜け。つまり、C大阪は失点さえしなければ決勝に進めます。ですが、今季のC大阪には最初から狙って0―0、または1―0という試合はできない。守備に自信があるチームなら0―0の試合はできますが、常に守備不安を抱えたチームがこの作戦を採るとほぼ失敗します。

 

 逆に京都は得点を奪わないと勝てないわけですから、開始から積極的に仕掛けるでしょう。今季の総得点50はPO出場4チームで最少ですが、C大阪の平均失点は1・1点ですから、数字上では1点は取れる計算。しかも失点37はリーグ最少3位タイ。つまり京都はC大阪ができない「1―0勝利」ができるチームです。

 

 個人技に優れるFWエスクデロ競飛王(28)、高さがあるFWイ・ヨンジェ(25)ら得点力がある選手がいますし、後ろには元日本代表GK菅野孝憲(32)がいます。菅野はシーズン終盤、ケガで欠場していましたが準決勝には出てくるでしょう。京都がC大阪を破る可能性は低くはないと見ています。

 

 では、C大阪はやはり分が悪いのか。一発勝負のPOですから何が起こるかわかりませんし、そもそもC大阪のほうが京都よりも得点力は上です。FW杉本健勇(24)は爆発力がありますし、FW柿谷曜一朗(26)がケガから復帰したのも好材料。昨年の悔しさを忘れていないFW玉田圭司(36)もここ一番で力を発揮するでしょうし、日本代表MF山口蛍(26)の実力と経験は他のJ2クラブの選手には求められません。無失点はできなくても、京都以上に得点力があるわけですから、勝ち上がることはできるはずです。

 

 決勝で当たることが予想される松本は強敵です。今季の松本は相手に合わせた戦い方ができますし、普通の試合なら今回POに出場する他の3チームでは勝てないと思います。とはいえ、PO決勝は「普通の試合」ではありません。松本は引き分けでもOKですが、ここでC大阪の立場が変わるのがポイントです。追われる者から追う者へ。C大阪は点を取らないと昇格できないわけですから、カウンターなどでの失点覚悟で積極的に攻めるしかない。先ほども言いましたが、タレント揃いで個の能力比較ならC大阪のほうが上。策士の松本・反町康治監督としても、個の勝負に持ち込まれたら手は打ちにくい。今季のリーグ戦は1勝1敗ですが、ともにアウェーでの勝利という結果が残っています。これもC大阪有利と見る根拠です。まとめると、C大阪は準決勝で京都に負ける可能性も高いが、勝ち上がれば松本を破って一気に“下克上”達成――。少々大胆な見立てとなりましたが、これが私の結論です。

 

 準決勝のもう1試合は松本が順当に岡山を下すでしょう。今季の松本は攻守のバランスが抜群で、失点がリーグ最少の32。それでいて得点もリーグ3位の62。日本代表のGK合宿にも招集された守護神のシュミット・ダニエル(24)の存在は大きく、前線でもFW高崎寛之(30)は計算ができる点取り屋です。ベテランのMF工藤浩平(32)の試合の組み立ても絶妙で、欠点が少ないチームです。

 

 一方の岡山はシーズン中盤までは質の高いサッカーを見せていて、夏場まではこのチームが自動昇格圏内に入ってくると見ていました。ですが、攻撃の柱のMF矢島慎也(22)がリオ五輪でチームを離れてからチームの状態が下降。31節(9月10日)の山口戦は1―0で勝ちましたが、現場で見ていた私の印象は、岡山が勝ちきったというより、山口が取りこぼしたという感じでした。

 

 案の定、そこからの岡山は、34節で岐阜に勝った以外は未勝利(4分け4敗)。シーズン終盤の勢いが必要なPOで、この失速ぶりは致命的です。岡山としては今シーズンの松本との対戦成績が1勝1分けというところに希望を見つけたいところですが…。

 

 ☆はやし・こうへい 1978年6月27日、山口・防府市生まれ。兵庫・滝川二高から1997年にG大阪に入団。主にスーパーサブで起用され、札幌、川崎、山形で計8シーズン、J2でプレーし、181試合、29得点。天皇杯は11試合、3得点。足首のケガで07年シーズンを最後に現役引退。16年は「スカパー!」で山口のホーム試合の解説を担当した。175センチ、68キロ。家族は恭子夫人と2男。