【W杯アジア最終予選】名物サポーター“全力さん”の応援哲学

2016年11月15日 14時30分

チームに声援を送る全力さん

 サッカー日本代表はW杯切符を獲得できます――。ハリルジャパンはロシアW杯アジア最終予選で苦闘を続けており、大一番のサウジアラビア戦(15日、埼玉)にも不安がつきまとう。そんななか、常に一生懸命な応援スタイルで知られる名物サポーターがいる。「全力さん」こと加納広明氏が本紙の直撃に応じ、自らの応援哲学とW杯出場を目指して奮闘中の日本代表に“全力”でエールを送った。

 

 全力さん――。J2東京Vのサポーターでもある加納氏の応援する姿を見ていた子供のつぶやきが、その由来だった。「2013年の開幕してすぐのヴェルディの試合で、お子さんが自分を見て“全力さん”と言ってくれたのを(サポーター)仲間が聞いて広まっていった感じ。そこから代表(サポーター)にも広まっていきました」

 

 常に「一生懸命」が加納氏の身上。ゴール裏スタンドに陣取り、大きな声で一心不乱にイレブンを激励し続ける。試合が終われば選手と同じように疲労困ぱい。まるで魂が抜けたようにぐったりする姿は一度見たら忘れられない。そんなインパクトもあって、いまやサポーターの枠を飛び越えた存在になりつつある。

 

 日本代表のオフィシャルパートナーを務める飲料メーカーの「キリン」が、全力さんをプロモーションに起用。9月のロシアW杯アジア最終予選UAE戦に向けたポスターに登場し、ホームページ上で同社社員と応援をテーマに議論を交わした。11日の国際親善試合オマーン戦では、スタジアムの大型スクリーンに全力さんが代表を応援する動画も流された。

 

 ありったけの愛情を注いでいる日本代表は現在、バヒド・ハリルホジッチ監督(64)が解任と隣り合わせの状況で苦闘を続けている。加納氏は「メディアではいろいろ言われていますが、ハリル監督を支持していますし、残り試合を全勝すれば(ロシアW杯に)行けますよね。みんな一緒に頑張ろうという気持ちがあれば通過できる。(サポーターが)変な雰囲気をつくってしまうと選手に伝わってしまう。スタジアムを盛り上げ一体感を出していけば、世間の雰囲気も変わってくる」とあくまで前向きだ。

 

 特定の選手を応援するのではなく「全選手」という“箱推し”。勝てないと選手に罵詈雑言を浴びせるサポーターも多いが、加納氏はどんなときも批判しないという応援哲学を持つ。「僕は批判が苦手なんですよ。勝つために批判は必要かもしれないけど、どうにも苦手で…。自分は激励というか後押しするタイプだと思っています」

 

 もちろん勝利が二の次というわけではない。ロシア切符獲得に向け「これからは総力戦ですね。選手もそうですし、監督、協会の人、スポンサーの方、マスコミの方、スタジアム関係の方、ファン、サポーターが同じ方向に向かっていくことが大事。スタジアムで多くの人を巻き込む応援でチームをサポートしていきたい」と力説した。

 

 全力さんはできる限りスタジアムへ足を運び、ハリルジャパンに“魂の叫び”を送り続けるという。その願いを受けたイレブンの奮起を期待したいところだ。

 

【全力さんとは?】東京都在住で年齢や職業は非公表。競技歴はなく2000年シドニー五輪でサッカーに興味を持ち、日本代表を応援し始めたという。07年からは東京ヴェルディのサポーターとなり、09年ごろに現在の“全力スタイル”を確立し、各方面から注目を集めた。最近では全力さんを目当てに東京Vの試合を観戦するファンが急増。サインを求められる機会も多いという。東京Vのサポーター組織・加納組のリーダーを務める。