サッカー日本代表が国際親善試合オマーン戦(11日、カシマ)で4―0と快勝。1年5か月ぶりに代表復帰したFW大迫勇也(26=ケルン)は2得点を挙げる活躍で新エースに名乗りを上げた。所属クラブで経験した数々の苦難を乗り越え、ようやく日本代表でも結果を出した。その裏には“脱優等生”という大きな変化があった。

 先発に抜てきされた大迫が、2009年(13年まで在籍)にプロとしてのキャリアをスタートさせた鹿島の本拠地で、うれしい“凱旋ゴール”を決めた。前半32分にヘッドで先制点をたたき出すと、同42分にはペナルティーエリア内で冷静に相手DFをかわし2点目。「カシマで点を取れてうれしかった。内容より点を取ることしか考えてなかった」と振り返った。

 再び日本代表に戻ってこれた要因は、ストライカーとして意識改革したことだ。ケルンに所属経験のあるDF槙野智章(29=浦和)によれば、大迫は「代表で戻ってやるときにエゴを出していきたい。監督の決めることばかり表現するだけではよくない」と話していたという。これは以前の大迫にはなかったところで「こういう発言は変わったところ。FWはそれくらい負けん気が強いほうがいい。以前だったら監督の求めることをやろうとし過ぎていた」(槙野)。

 だからこそ、代表から遠ざかっていた1年5か月の間に起こった苦難に打ち勝つことができた。昨季はケルンでセンターFWでの起用を望んだが、サイドや中盤を任されて葛藤した。期待外れのプレーが目立ったせいか、地元サポーターから反感を買い、首脳陣がホームで大迫の起用を避ける事態にまで発展。さらに今年5月、ドイツ紙「ビルト」が「ホームシック」と報じ、慌てて本人が否定したこともあった。

 そうしたなか、槙野に語ったように姿勢を変えていき、“覚醒”につなげていった。今季は2トップの一角としてスタメンに定着し、ここまでリーグ戦2ゴール1アシストを記録。日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(64)の評価も急上昇させた。指揮官は10月には「今の状態を続ければ代表に入るチャンスはある」と半信半疑のようだったが、今回は「フィジカル的なクオリティー、ヘディングも強い」と期待を隠さなかった。

 今回の相手はW杯アジア最終予選に進めなかった格下のオマーンだけに手放しで喜べない。それでも、代表定着に前進したのは間違いない。槙野も「代表の得点力不足と言われているけど、彼だったら解決してくれると思う」と期待する。この勢いに乗って大迫が日本の点取り屋として君臨する。