リオ五輪の“幻のエース”FW久保裕也(22=ヤングボーイズ)が、ハリルジャパン初招集を果たした。着実なステップアップの裏では何があったのか。

 所属クラブの事情でリオ五輪出場がかなわなかった久保は、4年9か月前にザックジャパンに招集されるなど早くから実力を評価されていた。しかし、京都ユース時代の監督だった本田将也氏(42=J2京都チーム強化本部育成部部長)は「ストライカーなので自分が点を取って勝ったときと、点を取らずに勝ったときの表情が全然違う。勝っても点を取らなかったら負けたような感じ」と苦笑いしながら、当時を振り返る。

 しかし2013年6月にヤングボーイズ移籍後、オフなどで再会するごとに本田氏はこう感じるようになった。「チームのことを考えるようになったし、以前は決めたら曲げなかったけど、すごく柔軟性が出てきた。自分が成長していくためには、人の話を聞いて知識を増やさないといけないと気づいたみたい」

 もちろん、信念を曲げない部分を失ったわけではない。2年目(14―15年)のシーズン、当時のウリ・フォルテ監督(42)から日本代表MF香川真司(27=ドルトムント)のようなトップ下の役割を求められたところ、FWでの起用を直訴して干された。その際も恩師に相談したのだが、「とにかく結果を出すしかない」と決して弱音を吐かなかったという。

 苦境にもめげずにアピールを続けた結果、そのシーズン終盤に再び出場にこぎつけ、昨季は欧州移籍後自己最多のリーグ戦9得点を記録した。今季も現在リーグ戦3試合連続ゴール中。持ち前の頑固さとコミュニケーション能力がうまく融合しただけに、今回の代表戦でも期待できそうだ。