日本代表10番の不振が思わぬところに飛び火した。国際親善試合オマーン戦(11日、カシマ)とロシアW杯アジア最終予選サウジアラビア戦(15日、埼玉)に向け7日、MF香川真司(27=ドルトムント)が帰国した。今季は大スランプのため結果を出せずに八方ふさがりの状況だが、日本サッカー協会と所属クラブの関係まで冷え込みつつある。窮地に立たされた10番は、逆境をはね返すことができるのか。

 今季の香川はトーマス・トゥヘル監督(43)の信頼を失い、出場機会が激減。ようやく10月22日のインゴルシュタット戦、同29日のシャルケ戦とリーグ戦で2試合連続先発出場を果たしたが、足首のケガもあって直近の2試合は再びベンチ外となっている。

 それでもFW本田圭佑(30=ACミラン)のように日本代表で結果を残せばまだ救いはあるのだが、香川は相変わらずの低空飛行。ロシアW杯アジア最終予選では全くいいところがなく、10月6日のイラク戦はついに出番なし。ポジション争いも激化しており、レギュラー落ちも現実味を帯びてきている。

 そんな苦境に輪をかけているのが、日本代表チームと所属クラブの微妙な関係だ。「トゥヘルが香川の扱いについて代表側に不満を持っているという話は聞く。クラブと協会の間で意思疎通などがうまくいっていないのではないか」と欧州クラブ事情に詳しい代理人は指摘した。

 特にドルトムント側は日本代表の活動期間中に香川が故障するケースが多いことに加えて、体調が悪化した際に協会側が十分な情報を伝えてこないと憤っているという。また、コンディションが良くない時に代表招集を見送るなどといった相談に応じない姿勢にも、不信感を募らせているようだ。

 ドルトムント側は、香川の体調が整わない原因が“日本代表にある”と言わんばかり。だが一方で、クラブとの交渉を担当する霜田正浩ナショナルチームダイレクター(49)は普段から「ルール通りにやっている」と話している。

 両者の間には大きな溝ができつつあるが、これには香川の現状が大きく影響している。ドイツでも代表でも中心選手として期待される一方で、今シーズンは体調不良や度重なるケガによって本来のパフォーマンスを発揮できないまま。不調からの出口が見えないことでドルトムント、代表ともに過敏になっており、“ボタンの掛け違い”が生じてしまったようだ。

 香川はこの日、成田空港で「(足首の負傷は)大丈夫です。(代表)ドクターと話をします」と語っただけ。周囲に漂うモヤモヤを吹き飛ばすには、誰もが認める絶対的な活躍を見せるしかない。