タレント揃いと言われる東京五輪世代の行く末は――。バーレーンで開催されていたU―19アジア選手権で初優勝を飾ったU―19日本代表が31日深夜、羽田空港に凱旋帰国した。鬼門だったアジアの壁を突破したチームは若手有望株の宝庫。すでに欧州クラブから強い関心を寄せられている選手も少なくなく、海外移籍の低年齢化に拍車がかかりそうだ。

 サウジアラビアとの決勝戦でPK戦の死闘の末に優勝を果たした日本。一夜明けて、都内のJFAハウスで取材に応じた日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(64)は「この世代は本当に能力がある。試合を見て、能力がある選手も確認できた」とイレブンのプレーをチェックして高く評価した。さらに「いろんな選手の情報を得られた。スタッフに何人か目に付いた選手について尋ねた。私は18歳でも19歳でも良い選手なら問題なく呼ぶ」と近い将来のA代表招集を示唆するほど絶賛した。

 今大会では、MVPに選出されたMF堂安律(18=G大阪)やエースFW小川航基(19=磐田)、2014年ブラジルW杯に練習パートナーとして同行したMF坂井大将(19=大分)、全6試合無失点の堅守を支えたDF中山雄太(19=柏)ら多くの逸材が活躍。粒揃いのメンバーには、早くも欧州クラブからの触手が伸びている。

「この世代には現時点で飛び抜けた実績を残している選手はいないが、磨けば化けると評価されている選手が多い。欧州でもかなりのクラブが調査をしていて、早々に向こうに行く選手も出てくるのではないか」と欧州クラブとパイプのある公認代理人は指摘する。

 日本代表MF香川真司(27=ドルトムント)らを顧客に持つトーマス・クロート氏(57)ら名だたる代理人や、イングランド、スペイン、ドイツなどを含めた欧州クラブのスカウトたちがこれまでU―19代表メンバーのプレーを直接視察している。スペイン1部バルセロナの下部組織にいたMF久保建英(15=FC東京U―18)や同U―14レアル・マドリードのMF中井卓大(13)らが世界から注目を集めたことも、日本の若手有望株が注目されるようになった一因となっている。そのため、Jリーグで活躍する前に海を渡る選手が続出する可能性があるという。

 これまでも21歳で欧州へ渡った中田英寿氏(39)やFW本田圭佑(30=ACミラン)など日本代表の中核を担ってきた選手が早い段階で海外挑戦してきたが、快挙を果たしたU―19メンバーの流出時期はさらに早まることが濃厚。来年5月のU―20W杯(韓国)での活躍次第でオファーが殺到する選手が出てきてもおかしくない。Jの空洞化という心配も出てきそうだが、それ以上に膨らむ期待。

 東京五輪世代はしばらくファンを楽しませてくれそうだ。