【オーストラリア・メルボルン発】サッカーのロシアW杯アジア最終予選(11日)で日本代表はオーストラリアと1―1の引き分けに終わった。強豪を相手に敵地でどうにか勝ち点1を確保したが、試合内容は相変わらず低調。バヒド・ハリルホジッチ監督(64)とイレブンの溝も深まるばかりで、現状のままではW杯切符の獲得は厳しい。監督交代の機運が高まるなか、有力候補に意外な名前が浮上してきた。

 窮地のハリルホジッチ監督はFW本田圭佑(30=ACミラン)を1トップで起用し、絶好調のMF清武弘嗣(26=セビリア)を先発から外すなど“奇策”に打って出た。

 前半5分にFW原口元気(25=ヘルタ)のゴールで先制こそしたが、付け焼き刃の戦術はいつまでも通用しない。徐々に押し込まれ、後半7分には原口が相手を突き飛ばしてしまい、PKを取られて同点。すると指揮官は守りに入るよう指示してそこから防戦一方に。引き分けには持ち込んだものの、先制点を生かせず勝ち点3を逃した格好だ。

 日本サッカー協会の西野朗技術委員長(61)はハリルホジッチ監督の続投について「そう考えている」とひとまずクビはつながったが、解任危機が去ったわけではない。

 選手の体調を顧みないミーティングの長さや、異常なまでの管理主義、一貫性のない指示などに選手は混乱。DF槙野智章(29=浦和)も「前回褒められたプレーが、次に招集された時には『このプレーは絶対ダメだ』と言われて…。どっちなんだと」と語っている。

 練習ではボールの蹴り方や単調なドリブル練習など小学生レベルの指導を押しつけ、一部の選手から不興を買ったことも。最終予選ではピリピリムードに拍車がかかり「選手に『余計なことは何もしゃべるな』ときつく言っているようだ」(代表の主力選手に近い関係者)と異例の“かん口令”まで敷いた。

 指揮官のめちゃくちゃな迷走に選手たちの不満は爆発寸前。両者の関係は修復不可能な域にまで達し、チームは空中分解の危機に陥っていると言っていい。

 このままではW杯切符の獲得は難しく、監督交代が現実味を帯びてくる。解任ならリオ五輪代表を率いた手倉森誠コーチ(48)の暫定指揮が既定路線。しかし、五輪で惨敗を喫し国際舞台で実績ゼロの指揮官にW杯を託すのは心もとなく、協会内にも反対意見は多い。

 次戦のサウジアラビア戦(11月15日、埼玉)後は最終予選が約4か月空くため、外部招聘の準備期間は少なからずある。そこで急浮上しているのが、2年前のブラジルW杯まで日本を指揮したアルベルト・ザッケローニ元監督(63)だ。

「いざという時にはザックの選択肢もある。アジアでの戦いを熟知しているし、選手も知っている。緊急登板でも結果を出せるはず」(代表に選手を送り出すJクラブ関係者)

 ザッケローニ氏は1月に中国1部リーグ・北京国安の監督に就任したが、成績不振で5月に解任されており、現在はフリーの身だ。攻撃的なパスサッカーは代表選手の目指す方向性と一致し、ロシアW杯本大会で通用するかは別として、対アジアでは有効。選手の特徴は4年間の指揮で把握しており、短期間でのチーム再建に期待が持てる。本人もオファーがあれば、前向きに検討する準備があるという。

 サウジアラビア戦の結果次第では、ハリル解任→ザックジャパン復活という驚きの展開もありそうだ。