日本サッカー協会の西野朗技術委員長(61)が愛弟子をキーマンに指名した。リオ五輪に臨むサッカー男子代表のチームリーダーを務める西野委員長は、オーバーエージ(OA)枠の中でもDF藤春広輝(27=G大阪)を高評価。ピッチ内外でチームに貢献できる存在として手倉森誠監督(48)に猛プッシュし、48年ぶりのメダル獲得に向けた“切り札”として期待を寄せた。

 1996年アトランタ五輪でブラジルを倒した“マイアミの奇跡”で男子代表監督を務めた西野委員長は「チームリーダー」の肩書でリオ五輪に臨む。

 今回の代表メンバー18人については「サッカーをよく知っていてセンスがある選手。(手倉森)監督はそういう選手をしっかり見ている」と評価する。OAもDF藤春、DF塩谷司(27=広島)、FW興梠慎三(29=浦和)で弱点を補強するなど可能な範囲で最強チームをつくり上げた。

 なかでも西野委員長が信頼しているのはG大阪監督時代に直接指導した藤春だ。「あいつはコンスタントに動けるし、普通のヤツではない。とにかく走れる」とケタ外れの運動量が、世界の強豪を相手にしたときに日本の大きな武器になるという。活躍を確信するのは藤春の実力を誰よりも理解しているからだ。

 2011年からG大阪でプレーしている藤春だが、当時は関西2部の大体大から入団したばかりで全国的には無名の存在だった。しかし西野委員長は藤春のスピードと運動量に注目し、シーズン開幕前のアジアチャンピオンズリーグ1次リーグ初戦のメルボルン(オーストラリア)戦に起用すると、リーグ4戦目の福岡戦で初先発。藤春もその期待に応えて、1年目から名門クラブのレギュラーに定着した。

 また、ピッチ外の部分も買っており「試合に負ければ大泣きするし、感情も豊か。ヤンキーのようだが見かけによらないよ」と冗談交じりに人間性を高く評価。OAとして若手イレブンに入ってもすぐにチームに溶け込み、実力を発揮できるという。そうした長所を手倉森監督には直接伝えた。

 U―23日本代表が臨んだ5月のトゥーロン国際大会(フランス)を視察した際に「実はテグに『藤春はどういうヤツですか』と聞かれた」。相談を受けた西野委員長はピッチ内外で太鼓判を押すと、手倉森監督は「そうですか」と納得した表情を浮かべたという。OAの人選に迷っていた指揮官の背中を、最後に“恩師”がひと押ししたというわけだ。

 リオ五輪に向けたOA選出が内定した直後の6月25日にはG大阪―名古屋戦(吹田S)を視察し、藤春に「頼むな!」と直接激励した。名伯楽としても知られる西野委員長が“お墨付き”を与えたOAサイドバック。ブラジルで若きイレブンをサポートし、メダル獲得を目指す。