日本人の無限の可能性を見せつける。リオ五輪サッカー男子日本代表は21日、羽田空港からブラジルへ出発。男子サッカー48年ぶりのメダル獲得へ強い決意を示した手倉森誠監督(48)は、A代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(64)にただならぬ対抗心を持っている。その裏にあるのが昨年8月の東アジアカップ(中国)で生まれた“確執”。2人の指揮官の間に一体何があったのか――。

 出発セレモニーで花束を受け取った手倉森監督は「熱い戦いになる。これからの日本サッカーの将来、なでしこ(ジャパン)がいないことを考えても我々に課せられている使命は大きい。メダルを取って帰ってきたい」と話して機上の人となった。今後はアラカジュでキャンプを行い、30日(日本時間31日)の国際親善試合ブラジル戦(ゴイアニア)で最終調整。8月4日(同5日)に迎えるナイジェリアとの1次リーグ初戦から男子サッカー48年ぶりのメダル獲得への挑戦が始まる。

 使命感に燃える指揮官。だがその一方で、ハリルホジッチ監督を見返したいという強い気持ちも忘れていない。

 きっかけとなったのは、2分け1敗で最下位(出場4か国)に終わった昨年8月の東アジア杯。同大会中、A代表指揮官はミーティングで国内組だけのメンバーを「これはB代表だ」「日本はこんなもの」などと度々批判した。手倉森監督は「あのころ、日本のサッカーを批判されたようなことがミーティングであったからね。俺は(ハリルホジッチ)監督には『そんなこと言うなよ』ともちょっと話した」と振り返る。

 選手以上に日本人の可能性を信じる手倉森監督だけに、それを全否定するハリルホジッチ監督との間に“確執”が生まれるのも仕方なかった。当時A代表コーチも兼任していたが、同大会でベンチから外され、昨年10月中旬から五輪代表監督に専念。自身の信念を証明したいという思いを抱きながら、1月のリオ五輪アジア最終予選を突破し、本番までこぎつけた。

 オーバーエージ(OA)枠の選考にも自身の思いを反映させた。DF藤春広輝(27=G大阪)、FW興梠慎三(29=浦和)の2人は、手倉森監督とともに悔しい思いをした東アジア杯のメンバー。「(東アジア杯で)選手たちに『あんなことを言わせるな』と話した中で、あいつら(OA選手)は大きくうなずいていた選手たち。だから(リオ五輪でやれるところを)示すときだと。その力がある」と語気を強めた。

 手倉森監督にとって、リオ五輪は自身の思いを結実させる舞台となるのか。