リオデジャネイロ五輪に出場するサッカー男子のU―23日本代表は国際親善試合(6月29日、長野・松本)でU―23南アフリカ代表に4―1と圧勝した。国内最終戦を飾り、いよいよ本番モードに突入。五輪メンバー発表も7月1日に迫るが、一方で下馬評は決して高くない。果たして目標のメダル獲得に届くのか。元日本代表監督で日本サッカー協会の技術委員としてオーバーエージ(OA)枠の選考にも携わった石井義信氏(77=FC東京アドバイザー)が、手倉森ジャパンを徹底解説した。

 ゴールラッシュで国内最終戦を終えた日本だが、U―23南アフリカ代表は強行軍の来日で疲労の色も濃く、日本にはホームの利もあった。手倉森誠監督(48)が「五輪で戦ったら分からない」と語るように、大勝も額面通りには受け取れない。

 日本は五輪1次リーグB組で「死の組」に入った。優勝候補のナイジェリア、U―21欧州選手権を制したスウェーデン、ブラジルW杯でザックジャパンが大敗したコロンビアと強豪ばかり。しかもOAでは欧州組の招集に失敗し、国内組のFW興梠慎三(29=浦和)、DF藤春広輝(27=G大阪)、DF塩谷司(27=広島)とA代表の“一軍半クラス”の参加にとどまった。

 誰がどう見ても非常に厳しい状況だが…勝算はあるのか。ソウル五輪予選で日本代表を率いた石井氏は、まずOA組と国内組の融合がカギとみる。「OAは難しい。入れてみて競争させるわけじゃない。ものすごく良いチームが出来上がっているのに、3人違う選手を入れないといけない。OAを入れてチームがうまくいかなくなるかもしれないし、手倉森も悩んだはず。3人と15人、そこをうまく合わせる作業ができるか」

 2004年アテネ、08年北京の両五輪時に技術委員としてOA選考にも携わった経験から、短期間でチームを融合させる難しさを指摘。一方で、OA招集が国内組になったメリットも強調する。

 アテネ五輪ではOAに欧州組から当時ハンブルガーSV(ドイツ)所属のFW高原直泰(37=現沖縄SV)を招集しようとしたが「高原がエコノミークラス症候群になってうまくいかなかったりね(最終的にメンバーから外れる)。日本にいる選手のほうが嫌というほど見ている」。

 欧州組はオフ明けのためにコンディション調整が難しい。また、Jリーガーとのプレー速度の違いに戸惑うなど、周囲との連係に苦しんだ。逆にJリーグで見る機会が多い国内組は体調も良く、特徴をより深く把握できるため災い転じて福となる可能性もあるわけだ。

 また「死の組」がプラスに働くとの見解も。「(初戦の相手の)ナイジェリアのような優勝候補は決勝あたりに最高のパフォーマンスを出せるように体力を残そうとする。だから最初に一番強いチームとやることは意外とつつきがいがある。そこを勝てれば2、3戦目は勢いでいける」

 4年前のロンドン五輪では初戦で大本命スペインを破って4強進出を果たしただけに、説得力がある。その上で悲願のメダル獲得に向けて「あの世代のメンバーは面白い選手が多い。そして期待を持てる監督だ」。なかでも指揮官の手腕を「本当に素晴らしい。若い選手をあれだけ統率できて結果も出した」と高く評価する。

 さらに石井氏は「日本サッカー界として、優勝やベスト4以上の成果が出たらA代表監督として一番近いところにと。ずっと外国人でやってきたが、次は日本人でいい」。手倉森監督を次期日本代表監督にまで“推薦”するほれ込みようで、48年ぶりのメダル獲得へ、チャンスありと見ている。