エースが意地の2発だ。U―23日本代表は29日、U―23南アフリカ代表に4―1と快勝。7月1日に発表されるリオ五輪メンバー入りへのラストチャンスに臨んだFW中島翔哉(21=FC東京)は、2ゴールを挙げる大活躍を見せた。負傷明けのため本来の背番号「10」から「13」に降格となったが、五輪本番では再びエースナンバーに復帰する可能性が高まっている。

 4月に負った右膝内側側副靱帯損傷で五輪メンバー入りを危ぶまれた中島が、自らのゴールでリオ行きを手繰り寄せた。

 前半37分にMF大島僚太(23=川崎)からパスを受け、ゴールへ流し込むと、同アディショナルタイムにはFW浅野拓磨(21=広島)からのクロスに頭で合わせた。中島は「(1点目は)パスをくれる前に、目が合ったので来るかなと思った」。2点目については「自分がヘディングで決められるボールってめったにないんで、すごくいいボールだった」とチームメートに感謝した。

 ケガ明けでどこまでできるのか。チーム結成時から招集し続けてきた手倉森誠監督(48)でも確信がなかったため、今回は定番となっていたエースナンバー「10」をMF矢島慎也(22=岡山)に譲った。指揮官からの“愛のムチ”に、中島は「五輪で勝つためには自分が活躍することが必要だという(監督からの)メッセージだと思っている」と発奮材料にして、期待に応えた。

 背番号10への復帰については「日本の勝利が一番」と多くを語らなかったが、矢島は「決めるのは監督だけど、自分の気持ちとしては翔哉に背負ってもらいたい。自分は何番でもいい」と中島に返す意向を示した。さらに今回は左ヒジの靱帯損傷で出番のなかったMF遠藤航(23=浦和)も「翔哉は10番をつけたいんじゃないか」とエースナンバーへの復帰を歓迎する。

 この日の活躍により手倉森ジャパンの“定位置”に戻ることは確実。ただ、求められるのは五輪での結果だ。1月の五輪アジア最終予選前には「テグさん(手倉森監督)をリオに連れていきたい」と宣言してチームをけん引し、その通りになった。8月の本戦に向け「一緒にメダルを取りたい気持ちはある。自分もそこは目指している」とキッパリ。信頼関係を築く指揮官のために今度も有言実行をやってのける。