ケガから復帰したU―23日本代表FW鈴木武蔵(22=新潟)がサバイバルレースを制する。リオデジャネイロ五輪に出場するサッカー男子の日本はU―23南アフリカ代表戦(29日、長野・松本)に臨む。再起戦となる鈴木は五輪メンバー入りに自信をのぞかせたが、その裏では手倉森誠監督(48)との「約束」と、リオ五輪陸上男子100メートル代表のケンブリッジ飛鳥(23=ドーム)との意外な“関係”が強力な後押しとなっている。

 2月末に負った左大腿四頭筋肉離れ(診断は全治3か月)でリオ五輪最終登録メンバー入りを絶望視された鈴木が、1月の五輪アジア最終予選(カタール)以来となる手倉森ジャパンへの復帰を果たした。

 2014年のチーム発足当時からエースFWとして活躍してきたものの、リオ五輪に向けてはオーバーエージ(OA)枠でFW興梠慎三(29=浦和)の招集が内定。U―23世代でもFW浅野拓磨(21=広島)とFW久保裕也(22=ヤングボーイズ)が当確といわれており、厳しい状況に追い込まれている。

 自身の置かれた立場は承知の上。わずか18人しか出場できない狭き門の五輪メンバー入り。ラストチャンスとなる鈴木は「厳しいけどひたすら自分の良さを出していきたい。(DFラインの)背後に抜けるところだったり、大きくて動けるところを武器にしていきたい」と決意をにじませた。

 もちろん、リオ切符をつかむ自信もある。リハビリ中に取り組んできた体幹強化などの肉体改造の成果が、ライバルたちに対抗する“武器”になる。「下半身の軸が強くなった。おかげでヘディングのところでもブレなくなった。そういうところは(復帰後の)試合で感じているし、成長しているところ」

 実は負傷前に手倉森監督から直々に「ヘディング強化」の指令を受けた。185センチの長身ながらも苦手とするプレーだったが、克服した姿を見せれば、何よりのアピールになる。自慢のスピードに加えて高さを身につけた今ならば、チームの決定力不足という課題を解消するパフォーマンスも可能というわけだ。

 発奮材料もある。同じジャマイカ人の父を持つハーフアスリートのケンブリッジが、陸上短距離で五輪メンバー入りしたことに「刺激になりますね」と意欲を高めた。本人とは「会ったことはない」ものの「親は『知っている(面識がある)』と言っていた」と意外な“関係”も明かした。

 鈴木が五輪メンバー入りすれば、新たな交友が生まれ、お互いを高め合える存在になりそうだ。心身ともに準備が整いつつある鈴木。あとは試合で全力を尽くし、審判のときを待つだけだ。