ハリルジャパンに“ブラジルW杯の悪夢”再びか。6大会連続のW杯出場を目指す日本代表は9月からロシアW杯アジア最終予選に臨む。負けられない戦いが待ち受ける中、今後のチームの方向性を巡ってバヒド・ハリルホジッチ監督(64)とイレブンの間に溝が発生している。ブラジルW杯惨敗の要因となった“あの事件”と状況が酷似。今後の展開次第では大きな火種となりそうな雲行きだ。

 7日のキリンカップ決勝で主力不在のボスニア・ヘルツェゴビナに完敗したことを受け、ハリルホジッチ監督は方針転換を決断した。ふがいない若手選手たちに見切りをつけ、ベテランを登用する考えを提示(本紙既報)。だが、実は指揮官の方針転換はこれだけではなかった。

「フィジカルの戦いに持ち込まれた時に難しくなる。今の強豪国は180~185センチが平均身長になってきている。我々のチームには185センチ以上の選手が非常に少ない。そういったところも探していかないといけない」

 最終予選や本大会で待ち受けるハイレベルな相手と戦うために今後は代表選手の体格を重視し、日本代表の各ポジションで“大型化”を進めていくというのだ。

 確かにボスニア・ヘルツェゴビナ戦では199センチのFWミラン・ジュリッチ(26=チェゼーナ)に体格で圧倒され、2ゴールを奪われた。だからといって、日本には少ない大型選手の登用をいまさら言いだすのはさすがに無理がある。

 選手の間でもFW岡崎慎司(30=レスター)は「背が小さくても仕留められるやり方はあるはず。たとえばチリみたいなサッカー。あそこは主力で大きい選手はそんなにいないけど、前からどんどん行くとか自分たちの長所を生かして勝負している」と話す。体格面の優劣を考えるよりも日本の特性を生かした豊富な運動量と激しいプレス、スピードを前面に打ち出す方針を貫くべきという意見が多数派だ。

 最終予選に突入する大事な時期に指揮官の突然の“変心”は、大きな不安要素になる。「ブラジルではザッケローニさんがいきなりロングボールをやったでしょ。選手からしたら、あれはトラウマになっている」と代表選手を送り出すJクラブ関係者も心配する。

 2年前のブラジルW杯では当時のアルベルト・ザッケローニ監督(63)が、それまで練習したことのないロングボール戦術を選手に指示して現場は大混乱。大会中に当時の原博実技術委員長(57)が采配ミスをとがめるなどチーム内の求心力を失い、1次リーグ未勝利での惨敗につながった。

 無謀な方針転換はチーム内を動揺させるだけ。今回のハリル監督のやり方は2年前のケースと酷似している。焦りすら感じさせる指揮官だが、選手側の意見に耳を傾ける姿勢があるのは救い。今後の両者の議論が深まり、チームの強化にプラスに働くことを願うばかりだ。