窮地の日本代表を“悪魔の左足″が救う――。ロシアW杯アジア2次予選アフガニスタン戦(24日)と同シリア戦(29日、ともに埼玉)に臨むが、今後に向けチームを取り巻く状況は厳しい。バヒド・ハリルホジッチ監督(63)とJクラブの対立に加えて、見どころの乏しい試合内容で代表人気の地盤沈下が続き、テレビ視聴率も大不振。そんな中、エースFW本田圭佑(29=ACミラン)のFK弾が現状打破の“切り札”に指名された。

 発足から1年余りが経過したハリルジャパンは窮地を迎えている。昨年6月のW杯アジア2次予選では格下シンガポールにホームで屈辱ドローに終わったのを皮切りに、昨年8月の東アジアカップ(中国)では3戦未勝利と“アジアの盟主”の座は揺らいでいる。

 チーム力が向上しない焦りからハリルホジッチ監督はどんどん暴走。自身の発案で強行した代表合宿では、クラブとの約束をほごにして、選手の故障を誘発しかねない過酷な練習を課したほどだ。これにはクラブ側も猛反発しており、深刻な対立を生み出しかねない状況となっている。

 しかも、W杯2次予選は無敗ながら、攻撃は短調でイージーミスを連発。決定力不足は相変わらずで、面白みに欠ける試合が続く。ファンや評論家からは「つまらない」との不満が噴出する。あまりの批判に協会の霜田正浩技術委員長(49)が「強い相手に勝つために逆算してやっている」と弁明したこともあった。

 当然人気は低迷し、テレビ視聴率にも反映。W杯アジア2次予選でも数字は伸び悩んでいる。ザックジャパン時代にはW杯アジア最終予選で視聴率30%超えを連発していたが、昨年の東アジア杯では伝統の日韓戦でも平均視聴率10・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と1桁台目前の“危険水域”だった。

 まさに負の連鎖に陥っているハリルジャパンだが、救世主に期待されているのはあの男だ。「このままでは最終予選に入っても心配。やっぱり本田選手に活躍してもらうしかない。ガツンとFKを決めてもらえば盛り上がりも違うし、ファンの注目度が再び上がるキッカケになるはず。そうすれば視聴率も変わってくる」と民放キー局関係者は指摘する。

 かつて同じように岡田ジャパンも人気低迷に苦しんでいたが、2010年南アフリカW杯で本田が大活躍して躍進すると風向きは一変。特に1次リーグのデンマーク戦で決めた本田の豪快なFKゴールは日本列島を大熱狂させ、日本代表人気はV字回復を果たした。

 現在の窮地を一気に切り抜け、9月から始まるW杯最終予選でサポーターの後押しを受けるには、本田の“悪魔の左足”が最後の切り札。本田にはアスリートとして老若男女からも高い支持があり、FKでゴールを挙げた試合は視聴者からの反響が多いというデータも一部テレビ局のリサーチで判明している。

 かねてハリルホジッチ監督がFK精度の向上を求めているなか、本田は「監督は厳しく要求してくる。それをしっかり顔を見て言ってもらえるのはありがたい」と受け止め、FKゴールを誓っていたが、果たしてハリルジャパンを救う待望の一発は生まれるか。