日本サッカー協会は14日、リオ五輪に出場するU―23日本代表のポルトガル遠征(21~30日)メンバー22人を発表した。MF遠藤航(23=浦和)やFW浅野拓磨(21=広島)らA代表との“兼任組”が選出されたが、気になるのはその過酷なスケジュール。選手の相次ぐ故障にJリーグクラブの我慢も限界に達しており、怒りの矛先は日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(63)に向けられそうだ。

 1月のリオ五輪アジア最終予選からメンバー6人が入れ替わった。手倉森誠監督(48)が「ケガ人も出たので」と説明したように、U―23代表は故障者が続出。オフ返上で臨んだ五輪予選の影響もあってか、FW鈴木武蔵(22=新潟)を筆頭に主力級が相次いで離脱している。

 五輪本番に向けてこれ以上の負傷者は避けたいところだが、不安はまだまだ尽きない。理由はA代表との兼任組に襲いかかる蓄積疲労だ。

 今回の遠征には、7日から行われたA代表の合宿に参加した遠藤、浅野、DF植田直通(21=鹿島)の3人も選出された。J1戦やアジアチャンピオンズリーグ(ACL)を戦う過密日程の中でA代表合宿は当初、開催する予定がなかった。それが、ハリルホジッチ監督の強い要望によって実現した。

 しかも、スパルタ指導に加えて2部練習まで行い、クラブ側に自粛すると約束していた実戦練習まで強行した。一部のクラブ関係者は「そこまでやるとは聞いていない。うちだけでなく他クラブの監督も心配している」と憤慨。実際にDF森重真人(28=FC東京)が練習中に負傷し、緊急離脱を余儀なくされた。

 そんな“非道”な合宿に参加した3人が、今度はポルトガルまでの長距離移動を強いられる。特にACLに参戦中の浅野と遠藤はほぼ無休状態のなか、25日にロンドン五輪金メダルのU―23メキシコ代表と対戦する。28日の遠征2戦目のスポルティング(ポルトガル)戦は免除されて一足先にチームを離れるが、帰国直後にはそれぞれACLでの激戦が待ち受ける。

 日程や時差、移動距離などを考えると、その過酷さはブラック企業も顔負け。

 A代表合宿中には浅野が「フィジカル的にきつい」と漏らしており、A代表との兼務で肉体はパンク寸前。まさに危機的状況に陥っている。

 日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長(49)は「A代表優先。これは世界潮流」との方針を掲げるが、五輪代表の掛け持ちについては「基本的にしない。故障のリスクがある」とし、ハリルホジッチ監督も五輪への全面協力を約束していた。ところが、現状ではまったく考慮されていない。

 手倉森ジャパンがさらなる故障禍に見舞われれば、「酷使」の強硬路線を突き進むA代表監督への風当たりがより強くなるのは間違いない。