【なでしこ崩壊の舞台裏(3)】2011年ドイツ女子W杯の優勝で、なでしこジャパンを取り巻く環境は一変した。当時、日本サッカー協会幹部が「なでしこはカネになる」と公言したように、それまで1試合100万円に設定されていたテレビ放映権料は「一気に何十倍にも跳ね上がった」(ある民放局のサッカー担当プロデューサー)という。

 列島を大興奮させた世界制覇で国民栄誉賞まで受賞し、なでしこジャパンの認知度は大幅にアップ。人気、露出も増えたことで、放映権料も見直された。おまけに五輪予選などの公式戦だけではなく、親善試合も全国ネットで生中継される異例の事態。まさに“なでしこバブル”だった。

 NHKが中継したリオ五輪予選のテレビ放映権料も「もちろん億は超えている」(テレビ局関係者)。高額の放映権料を支払うテレビ局は金額に見合った視聴率を稼ぐため、チーム側に少しでも話題になることを求めた。さらには代理店などとともに、選手選考についても“要望”を伝えるようになった。

 13年のアルガルベカップ(ポルトガル)では前年のU―20女子W杯で活躍したMF田中陽子(22=ノジマステラ神奈川相模原)の抜てきも代理店などの要請があったと言われる。14年アジア大会(韓国)の選手選考でも同じような“外圧”があり、佐々木則夫監督(57)は親しい関係者に「俺の思う通りにできない」と漏らしたという。

 女子サッカー人気が高まるなか、協会の収入は急増。これまでの大幅な赤字が削減されたり、アンダー世代代表の強化費増の恩恵もあった。その一方で、噴出した様々な弊害。これらが絡まり合い、なでしこジャパンを栄光から崩壊へと向かわせた。4年後の東京五輪へ向け、取り組むべき課題はあまりに多い――。(終わり)