なでしこが過去最難関の試練に挑む。サッカー女子のリオ五輪アジア最終予選(29日開幕、大阪)に臨むなでしこジャパン候補は22日から大阪・堺市内で最終調整を行っている。強豪国を相手に10日で5試合という過密日程のなか、わずか2枠しかない出場権を争う戦いについて、元日本代表MF前園真聖氏(42=本紙評論家)は大苦戦を予想。4大会連続の五輪出場に向けて、ヤングなでしこ世代の奮起をキーポイントに挙げた。

【前園真聖 ゾノの焦点!】なでしこにとっては今までにないほどの厳しい戦いになるでしょう。アジア女子は北朝鮮やオーストラリアをはじめ、世界屈指の強豪国が揃っていますし、五輪に出場できるのはわずか2か国と狭き門です。ある意味では男子のU―23日本代表よりも過酷な戦いになるかもしれません。

 大黒柱だった澤穂希さん(37)が抜けたことも心配ですが、それ以上に不安なのは、主力メンバーがほとんど変わっていないことです。2011年ドイツ女子W杯に初優勝してから、12年ロンドン五輪銀メダル、15年カナダ女子W杯準優勝を経て現在まで、大きな変動はありません。

 世界大会で好結果を出しているので「同じ選手で積み上げるのは大事」「チームが成熟する」という考え方もあるかもしれません。しかし、長期間同じメンバーでは相手国からも徹底的に研究されて丸裸にされてしまいます。チームとして戦い方の幅を広げられないし、マンネリ化は避けられません。

 これまで佐々木則夫監督(57)もアルガルベカップ(ポルトガル)などで若手を試しているのですが、現状で世代交代は進んでいません。アジア強豪国は昨年のW杯後から新チームへと切り替えていますし「打倒・日本」を掲げて、強化しています。だからこそ、日本はかつてない窮地に立たされているのです。

 逆境を打破するために期待しているのは、2012年のU―20女子W杯で3位になったヤングなでしこ世代。MF猶本光(21=浦和)は代表でも遜色ない実力レベルにあり、もう少し周囲と融合し、連係力などがアップすれば、なでしこで攻守の要となれる存在です。

 もう一人の注目はFW横山久美(22=長野)。小柄ながらパンチ力もあり、高い技術力とスピードがあります。なかでもドリブル突破は大きな魅力です。アジアのライバル国が日本と戦う時は守備的な陣形で臨んでくるので、横山の突破力は有効な武器になるでしょう。

 もちろんキャプテンのMF宮間あや(31=岡山湯郷)、エースFW大儀見優季(28=フランクフルト)ら既存の主力が万全であることが欠かせませんが、ホーム開催というアドバンテージを生かして、過酷な戦いを乗り切ってほしいですね。