サッカー男子のリオ五輪アジア最終予選を兼ねたU―23アジア選手権の準決勝(26日)でU―23日本代表はイラクと対戦する。勝てば上位3か国入りが確定し、リオ切符を獲得。敗れても3位決定戦(29日)に回る。五輪出場をかけた最後の戦いに向け、元日本代表FW武田修宏氏(48=本紙評論家)が決戦の行方を徹底分析。導き出した日本の「勝算」とは――。

【武田修宏の直言!】大会前の予想通りにイラクが勝ち上がってきたね。手倉森ジャパンがまだ勝利したことのないアジア屈指の強豪国。特に攻撃陣は高さと速さとテクニックがあって、選手たちの能力もかなり高い。非常に難敵と言えるんじゃないかな。

 日本が注意しなければいけないのは「イラクのメッシ」と呼ばれる11番のフマム・タリクではなく、10番のH・アリだね。スピードも技術もあるし、何より勝負強さが光る。攻撃陣の要で自由にさせると、かなりてこずるだろう。もう一人、ケアすべきなのは18番の長身ストライカー、A・フセイン。ロングボールを放り込まれた場合に起点となりかねない。

 ただ、イラクは選手個々の力はあるけど、チームの連動性はない。だから日本としては1対1の場面でも2人で挟んだり、周囲がカバリングすればいい。あとはセカンドボールをしっかりと奪うこと。ここまで見せてきた組織的で粘り強い日本の守備陣なら十分に抑えられると思うね。

 一方で、イラクの守備は決して強固ではないよ。DF陣はみんな前に対しては強いものの、裏を狙われると、反応は鈍くて、ポジショニングもあいまい。クロスに対してはクリアミスも多いから、そこは狙い目かな。日本はダイレクトパスをつないだり、FW久保裕也(22=ヤングボーイズ)がスペースに飛び込むプレーが有効。3、4人の選手が絡む連動性のあるコンビネーションで崩せば、確実にゴールネットを揺らせるはずだよ。

 あとは何度も言っているけど、CKやFKのセットプレーが大事でしょう。日本は入念にFKを練習していて、準決勝までトリックプレーを温存しているよね。そろそろ出しどきじゃないかな。セットプレーの際の守備もDF植田直通(21=鹿島)なら競り勝てる。

 簡単な試合にはならないだろうけど、日本の分析力はアジアナンバーワンだし、対策はわかっているはず。日程面も休養が1日多い分、有利かな。しっかり準備し、コンディションを整えて臨めば、手倉森ジャパンが負けるような相手じゃないよ。

☆武田修宏:たけだ のぶひろ=1967年5月10日生まれ。静岡県出身。幼少期から「天才少年」と呼ばれたストライカー。名門・清水東(静岡)か ら86年に読売クラブ(現東京V)入り。ルーキーながら11得点を上げ、リーグVに貢献し、MVPにも選出された。Jリーグ発足後はV川崎や磐田、京都、 千葉などでプレー。00年には南米パラグアイのルケーニョに移籍。01年に東京Vに復帰し、同シーズンで現役引退した。Jリーグ通算は94得点。JSL時 代も含めれば152得点を挙げた。87年に日本代表に選出。93年アメリカW杯アジア最終予選でドーハの悲劇を経験した。http://takeda.at.webry.info/