サッカー女子の皇后杯決勝(27日、等々力陸上競技場)で、INAC神戸が新潟に1―0で勝利して2年ぶり5度目の優勝を果たした。24年間の現役ラストマッチとなったINAC神戸のMF澤穂希(37)は宣言通り決勝点を叩き出し、最高の形で引退の花道を飾った。まさに千両役者らしい引き際となったが、一方で早くも現役復帰の可能性がささやかれている。クイーンが再びピッチに立つ可能性はあるのか? 本紙が探ってみると、そこにはある“条件”が――。

 女王が有言実行となる“有終の美弾”を決めた。両チームスコアレスで迎えた後半33分にMF川澄奈穂美(30)の右CKに頭で合わせてゴール。抜群の勝負強さでチームを皇后杯優勝に導き、チームメートから4度胴上げされた。

 まるで“クイーン”の引退のために台本が用意されたかのような劇的なラストマッチ。澤も「狙っていたゴールを決められて有終の美を飾れて素直にうれしく思う。チーム一丸となって目標を達成できて、とにかく優勝できてよかった」と喜びを語った。さらに「試合を終えて、より一層、悔いがないなと思えた試合だった」と完全燃焼を強調した。

 今後は“レジェンド”としてピッチ外からサッカー界、さらにはスポーツ界を盛り上げていくことが期待されるが…そのサッカー界ではなんと早くも「現役復帰」がささやかれている。実際、女子アスリートには引退↓現役復帰の例は珍しくなく、テニスのクルム伊達公子(45)が1996年に引退後、08年にプレーを再開。またバレーボールの荒木絵里香(31=上尾メディックス)やサッカーの宮本ともみさん(36)は出産を経て第一線に戻った。

 そんななか、中学時代から指導する恩師の竹本一彦氏(60=J2東京V・GM)は「ないと思う」と前置きした上で、こう指摘した。

「(再び現役選手としての)目的を持てるかどうかだと思う。今はやり尽くした気持ちだろうが、これからつくり上げていくような違ったクラブで、その主力としてプレーを請われれば、ユニホームを着ることがあるかもしれない。男子選手でもそういう例はある」

 男子では、元日本代表監督のジーコ氏(62)が1989年にブラジルで現役を引退し、90年に母国ブラジルでスポーツ担当大臣に就任した。しかし、91年に当時日本リーグ2部だった住友金属工業(現J1鹿島)のオファーを受け再びユニホームに袖を通し、クラブの礎を築き上げた。ゼロからチームをつくり上げる作業に大きな関心を持ったのが理由だが、今後、澤にも同じようなプロジェクトのオファーが来るようなことがあれば…魅力を感じる可能性があるということだ。

 もちろん力量は申し分ない。INAC神戸の松田岳夫監督(54)は「まだやれると思っている。経験を重ねたなかでのうまさはプレーにも表れている」と引退を惜しみ、なでしこジャパンの佐々木則夫監督(57)も来夏のリオ五輪に向け澤を「構想に入れていた」と話している。


 人間の考えは時間や環境とともに変化していくもの。澤が再びピッチに立つ可能性は決してゼロではなさそうだ。