【武田修宏の直言!】澤穂希選手の引退のニュースには驚いた一方で、ついにこの時がきたんだなと寂しい気持ちになったね。日本の女子サッカーを引っ張ってきて、W杯優勝に世界最優秀選手賞受賞。頂点を極めた人間はどうしてもその地位にしがみついて、一線を退くという選択肢が生まれにくくなる傾向もある。それだけに、今回は勇気ある決断だったと思う。

 ニュースを聞いてすぐにメッセージを送ったら、間もなく返信があった。そこには「悔いのないサッカー人生でした。これからもよろしくお願いします」と書かれていた。ケガもあったし、年齢からくる体力の衰えも感じていた中で、本当にすべてを出し尽くしたんじゃないかな。

 彼女は本当に気配りの人だった。それはピッチ内だけでなく、ピッチを離れても同じだった。

 今年8月、神戸まで行って彼女に結婚祝いを渡したら、すぐにお祝い返しをくれたんだ。忙しい身で、しかもそういったお祝いなんて数え切れないほどもらっているはずなのに、その一つひとつに丁寧に対応する。簡単に見えて、決して簡単なことじゃない。こんな気遣いができる人だから、彼女は現役生活を長く続けられたんじゃないかな。いただいたコーヒーカップは大事に使わせてもらっています。

 とにかく「お疲れさまでした」以外に言葉は見つけられない。あとは、残る皇后杯で有終の美を飾ってもらいたいね。

☆武田修宏:たけだ のぶひろ=1967年5月10日生まれ。静岡県出身。幼少期から「天才少年」と呼ばれたストライカー。名門・清水東(静岡)か ら86年に読売クラブ(現東京V)入り。ルーキーながら11得点を上げ、リーグVに貢献し、MVPにも選出された。Jリーグ発足後はV川崎や磐田、京都、 千葉などでプレー。00年には南米パラグアイのルケーニョに移籍。01年に東京Ⅴに復帰し、同シーズンで現役引退した。Jリーグ通算は94得点。JSL時 代も含めれば152得点を挙げた。87年に日本代表に選出。93年アメリカW杯アジア最終予選でドーハの悲劇を経験した。