渦中のストライカーが流出危機だ。J1の年間王者を決めるチャンピオンシップ(CS)決勝第1戦(2日、大阪・万博)は、広島がG大阪に3―2で逆転勝ちした。人種差別ツイートによる騒動に巻き込まれたG大阪のFWパトリック(28)は途中出場で無得点に終わったが、その実力には世界各国が注目。破格の条件を準備するクラブもあり、オフには大争奪戦に発展する可能性が出てきた。

 パトリックは11月28日に行われたCS準決勝の浦和戦で得点を決めたが、その試合後にSNS上で「黒人死ねよ」と人種差別的な投稿をされて社会問題に発展。「こういうことは人間としてやるべきではない」と大きなショックを受けた。その後、投稿した埼玉県内の高校生が名乗り出て謝罪し、パトリックも了承。生徒に向けて激励の言葉も送り、ひとまず事態は収束した。

 不本意な形でにわかに世間から注目を集めることになったパトリックは、騒動の影響に加えて浦和戦で120分間フル出場した疲労が考慮され“スーパーサブ”としてベンチスタート。1―0で迎えた後半32分にFW長沢駿(27)に代わってピッチに入ると、両チームのサポーターから拍手と歓声で迎えられた。

 だが肝心のゴールは奪えず、チームもその後に逆転負け。「(途中出場は)戦術的な部分。コンディションは悪くなかった。最後に点を取られて残念な結果になった」と悔しがったが、5日の第2戦(広島・Eスタ)に向け「何も終わったわけではない。今までも苦しい結果を乗り越えてきた」と頼もしく語った。

 この日は騒動の影響なのか本来の実力を発揮できなかったものの、今季リーグ戦で12ゴールを挙げるなどエース級の活躍で評価はうなぎ上りだ。ブラジルのサルゲイロから期限付き移籍中で今夏に契約を2016年末まで延長したが、中国の広州富力による関心が現地で報じられたばかり。だが、この動きはほんの序章にすぎない。

「万能型で今も実力を伸ばしているパトリックは、Jや中国はもちろん、中東や母国のブラジルでも評価が上がっている。ロシアでも声をかけそうなクラブがある。かなり良い条件を用意しているクラブもあると聞いている」とは欧州事情に詳しい代理人事務所関係者。

“渦中”のストライカーには世界各国から熱視線が注がれ、2億円以上の年俸と6~7億円の移籍金というJクラブでは太刀打ちできない破格オファーが舞い込む可能性もあるというから驚きだ。

 しかも…今回の騒動が「(移籍への)きっかけの一つにはなり得る」(同関係者)。親日家のパトリックとはいえ、心理的ダメージが移籍の引き金になることは十分考えられる。傷心の助っ人は来季もG大阪のユニホームを着ているだろうか。