17日に行われたサッカーロシアW杯アジア2次予選(カンボジア・プノンペン)で日本はカンボジアに2―0で勝ち、年内最終戦を勝利で飾った。とはいえ、内容はお粗末そのもの。6試合連続完封、FW本田圭佑(29=ACミラン)の5試合連続ゴールは、いずれも日本のW杯予選史上初の記録になったが、本紙評論家の元日本代表FW武田修宏氏(48)は、勝つためのコンセプトが見えてこないバヒド・ハリルホジッチ監督(63)の戦術に疑問符を付け、高い給料に見合わない指導力を断罪した。

【武田修宏の直言!】正直、ここまでひどい試合になるとは思っていなかったな。カンボジア製の不慣れなボールや人工芝のピッチというのは簡単な条件ではなかったかもしれないけど、相手は予選全敗のチーム。日本が12日のシンガポール戦から先発メンバーを8人入れ替えたとはいえ、圧倒して大勝しなければならない試合だった。

 この試合、引いた相手をどう崩すのかという視点で見ていた。日本代表にとっては永遠のテーマだし、今後控える最終予選でも課題になるのは間違いないからね。カンボジアは両サイドも下がって5バック。選手の対応力というよりは、ハリルホジッチ監督の手腕が問われる一戦だった。

 結論から言うと、完全に失格だね。日本とカンボジアの選手を比べたら「個」の力だけで崩せてしまうレベル。だからこそ、チーム戦略がどこまで浸透できているか、監督の狙いがどこにあるのかを見るチャンスだったけど、コンセプトがまるで見えてこなかった。

 5バックで受けられているのだから、サイド攻撃だけではダメ。もちろん、ゴール前も固められているから強引な中央突破も無力。大事なのはバランスと連動性なんだ。この日の日本代表は、サイドで詰まって中央に戻しても、フリーになった逆サイドに展開するだけ。スペースの空け方はできていないし、ボールの回し方にも工夫がない。攻撃面はすべて行き当たりばったり。これでは、相手は守りやすいよ。

 攻撃で一番必要な「3人目の動き」というのは練習をしなければできないし、もっと言えば、監督に確固たるコンセプトがなければ選手たちは動けない。監督は練習時間の少なさを嘆いているようだけど、そんな指導もしていない監督に大きな責任があるよ。

 何の見どころもない前半から、後半に入って投入されたMF柏木陽介(27=浦和)がFKからオウンゴールを誘発し、FW本田が終了間際にゴールを決めたけど、いずれも個人からの得点。この内容では、最終予選は勝てない。個人の力だけで勝てるほどアジアの最終予選は甘くないよ。

 どんなにいい選手が集まっても、監督のコンセプトが正しくなければチームとして機能しない。以前から言っているが、やはりハリルホジッチ監督ではアジアを勝ち抜くことは厳しいし、本大会に出場したとしても勝てないよ。

 これなら、J2で1000万円にも満たない年俸で頑張っている私と同世代の監督のほうが、いいサッカーを展開している。ハリルホジッチ監督は2億円以上ともいわれる年俸をもらっているのに、それに見合った仕事をしていない。これじゃ、給料泥棒と言われても仕方ない。もう、目の肥えたファンやサポーターも気づいたはずだよ。監督交代を真剣に考えてもいい時期に来ているんじゃないかな。

☆武田修宏:たけだ のぶひろ=1967年5月10日生まれ。静岡県出身。幼少期から「天才少年」と呼ばれたストライカー。名門・清水東(静岡)か ら86年に読売クラブ(現東京Ⅴ)入り。ルーキーながら11得点を上げ、リーグⅤに貢献し、MVPにも選出された。Jリーグ発足後はV川崎や磐田、京都、 千葉などでプレー。00年には南米パラグアイのルケーニョに移籍。01年に東京Ⅴに復帰し、同シーズンで現役引退した。Jリーグ通算は94得点。JSL時 代も含めれば152得点を挙げた。87年に日本代表に選出。93年アメリカW杯アジア最終予選でドーハの悲劇を経験した。http://takeda.at.webry.info/