【シンガポール発】ハリル監督の個人露出はまだ早いということか。サッカー日本代表は敵地で行われたロシアW杯アジア2次予選シンガポール戦(12日)で3―0と快勝した。4連勝でE組首位に立ち、最終予選進出は確実な状況だ。不振にあえいだチームがようやく軌道に乗り、バヒド・ハリルホジッチ監督(63)も余裕が生まれたのか、副業のテレビCM出演を熱望している。しかし、日本サッカー協会の“返答”は意外にも「NO」。その理由とは――。

 予選は3試合を残すが、この日快勝した日本はここまで5試合で得点15、失点0とシード国らしい戦いを見せており、最終予選進出はほぼ間違いない状況。ハリルホジッチ監督は「もう少し点は取れたが、選手には『おめでとう』と言いたい」と勝利を喜んだ。

 とはいえ、ここまでの道のりは険しかった。6月のW杯アジア2次予選初戦で格下のシンガポール相手にいきなり引き分け。エースFW本田圭佑(29=ACミラン)をはじめ欧州組が不在だった8月の東アジアカップ(中国)では、北朝鮮、韓国、中国に2分け1敗の未勝利で、タイトル奪取どころかまさかの最下位という屈辱を味わった。

 Jリーグ関係者は「監督は8月以降、かなりナーバスでスタッフにも厳しく当たっていたそうだ。ベンチ前でいつも大騒ぎしているのも、それだけプレッシャーになっていたんだろう」。

 実際に8月末に来日するはずだったディアナ夫人の予定を、仕事に専念するため延期させたほどだ。

 3月に就任した指揮官は早々に追い込まれる形となったが、秋になるとようやくチームは軌道に乗り、9月以降のW杯予選で4連勝。しかもアウェー3連戦を乗り切り、汚名返上を果たした。17日に年内最終戦となるW杯予選カンボジア戦を残すものの、過度の緊張からは解放されたことだろう。

 こうした状況から指揮官には新たな意欲が…。ハリルホジッチ監督はかねてピッチ外の活動にも積極的な姿勢で、特にテレビCM出演などの副業に興味津々だった。

 ただ、監督就任時に日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長(48)は「CM? まずは結果を出してから。それから考えたい」と保留していた。それがチームの成績が上向いてきたことで、指揮官は今後、各方面に“副業解禁”をアプローチしていく意向だという。

 しかし、協会幹部は厳しい見解を示す。

「個人としての活動を禁止しているわけではない。だけど『代表監督』という立場ではちょっと難しいだろう。代表スポンサーと業種が同じ企業ならダメだし、何よりもW杯出場を決めてからじゃないと…。(元代表監督のアルベルト)ザッケローニもCMに出たのは出場権を取ってからだった」

 協会側は代表監督に関してかねてW杯出場権獲得をCM出演解禁の目安としてきた。

 2次予選4連勝ではほんの序の口程度で、代表としての目標はまだ何も達成していない。当然、副業など認められないというわけだ。

“お預け”を食らった格好のハリルホジッチ監督だが、晴れて解禁となるその日までしっかりと勝ち続けるしかない。