ハリルジャパンが“劇薬”投入で活性化を図る。W杯アジア2次予選シンガポール戦(12日、カラン)とカンボジア戦(17日、プノンペン)に臨む日本代表で、注目は5年ぶり選出のFW金崎夢生(26=鹿島)だ。悪名高い“問題児”にもかかわらず、バヒド・ハリルホジッチ監督(63)が招集に踏み切った理由とは――。

 金崎は2011年10月にU―22日本代表候補合宿の練習中、MF柴崎岳(23=鹿島)と激しい口論を展開。一触即発の事態となり、代表スタッフや同僚選手を凍りつかせた。規律を重んじるU―22代表の関塚隆監督(55=J2千葉監督)は能力を認めつつも、本大会に向け候補メンバーにも入れなかった。その後は海外移籍を経て、2月に約2年ぶりにJリーグへ復帰し鹿島へ入団したが、問題児ぶりは健在だ。

 Jリーグナビスコカップ決勝では得点を挙げる活躍で優勝に貢献したものの、取材エリアでは報道陣の問いかけを無視。日本代表でも千葉県内で行われた合宿初日(8日)の練習後、テレビインタビューを受けた一方で、取材エリアでの対応を頑として拒み、代表スタッフを困惑させる一幕もあった。

 一連の問題行動から代表としての資質を疑問視する声も上がる中、ハリルホジッチ監督も性格など内面の情報を把握。5日のメンバー発表会見では「サッカーだけではなく人間性も見たい。ハイレベルなところでは完璧な人間性も要求される。彼にとっては良い機会になる」とくぎを刺した。

 金崎の招集はチームの和を乱す大きなリスクをはらむ一方で、こんな指摘もある。「今の代表の若手は変に周りを気にして小さくまとまっている感じがある。本来はヤンチャな選手が何人もいるんだから、あえてそういう選手を入れて起爆剤にしたいのでは」(Jクラブ関係者)。FW原口元気(24=ヘルタ)やFW宇佐美貴史(23=G大阪)らかつて問題児と呼ばれた面々に金崎という“劇薬”を加えて、闘争心を引き出すといった化学反応を期待しているのだ。さらなるチーム強化に向けて打った危険な一手は、吉と出るか凶と出るか。