日本代表MF香川真司(26=ドルトムント)がようやく「背番号10の仕事」を任されそうだ。ドイツリーグで好プレーを連発し、欧州での評価も急上昇。その勢いに乗れといわんばかりに、大勝が求められる11月のロシアW杯アジア2次予選アウェー2連戦(12日シンガポール戦、17日カンボジア戦)において、セットプレーなど大事な場面での“選手指名権”をFW本田圭佑(29=ACミラン)から香川に移す動きが高まっている。

 ようやく本来の輝きを取り戻した今季の香川は、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)で過ごした2年間や昨季の不安定さがウソのようなプレーを連発している。5―1で勝利した25日のアウクスブルク戦では、実質3アシストなどで4点に絡み、ドイツ大衆紙「ビルト」は、最高点となる「1」の評価をつけた(最低点は6)。現在、国内外問わず日本代表で最も“キレキレ”の選手だ。

 となれば、来月に控えるロシアW杯アジア2次予選2試合での大暴れも期待できる。香川は所属クラブでのプレーぶりと代表のパフォーマンスが直結するタイプ。極度の不振で1次リーグ敗退の“戦犯”となった昨夏のブラジルW杯が、無得点に終わったマンUでのシーズン直後だったことを見ても、その傾向は明らかだ。

 この勢いに乗らない手はない。ある元日本代表は「試合に出続けて調子のいい選手は、状況判断とかも的確になってくる。例えば今の日本代表だったら香川選手。監督の指示もあるとは思うけど、選手間で決めるピッチ上でのことは彼に判断してもらうのもありかもしれない」と語った。

 例えばFKキッカーの選択。日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(63)は現在、ピッチ上の位置によっておおまかにキッカーを決めているが、イレブンの判断に委ねられている部分もある。9月のロシアW杯アジア2次予選アフガニスタン戦では、本田の得意の位置だったが、ともにスタンバイしていたDF吉田麻也(27=サウサンプトン)の右足に託したように、ピッチ内の雰囲気で大きく変わってくる。

 これまでこれらの選択はほぼ本田の独壇場だったが、本田はミランでの“舌禍事件”の影響で出場機会が大幅に減った。試合勘の低下は免れず、試合中に好調な選手の見極めをするのは求めにくい。それだけに、大事な場面でのキッカーやターゲットとなる選手の最終判断は、試合が“読めている”香川に任せるべきというわけだ。

 自身が得点に絡むだけではなく、的確な選手指名でチームを勝利に導く。好調を取り戻した今の香川なら、背番号10の本来の仕事を完璧にこなしてくれるはずだ。