【オマーン・マスカット6日(日本時間7日)発】それでもエースは正義を貫く。ロシアW杯アジア2次予選シリア戦(8日)に向けて日本代表に合流したFW本田圭佑(29=ACミラン)が、クラブ首脳陣やサポーターなどを批判した“暴走”の真意を激白。核心を突いた発言は各方面に波紋を広げているが、今後も撤回の意思がないことを強調し、クラブでも日本代表でも頂点を目指す考えだ。

 ミランで出番を失ったことが発端となって、突如爆発した本田。その影響はシリアとの決戦を控えた日本代表にも及び、チーム周辺では「どうして圭佑はあんなことを言ってしまったのか」と今後の立場が危うくなったエースを気遣う声も少なくなかった。感情的になって生まれた発言となれば、これまでの本田とは違う精神状態で試合に臨むことになりかねないからだ。

 だが、そんな周囲の心配は本田自身が自分の言葉で打ち消した。練習後、ミランでの発言の真意を問われると落ち着いた様子で語りだした。

「サッカーをやってきて、下手なりにも本気でトップを目指している身として、行動を起こすときに、ただ起こしたことはないですから。目指すところから逆算して行動をとっている」

 本田はチーム再建に向け、あくまで建設的な意見を述べたにすぎないとし、誰かを糾弾する意図がなかったことを強調した。周囲から見れば“最後の一線”を踏み越えてしまったと見える発言も、アドリアーノ・ガリアーニ副会長(71)やシニシャ・ミハイロビッチ監督(46)と普段から密にコミュニケーションを取っているからこそ言える、という思いが本田にはある。

 それを証明するかのように、イタリアメディアは本田の発言に意外と好意的だった。6日付の「ガゼッタ・デロ・スポルト」紙は「あの寡黙で沈思黙考的な男の本田がクラブに直言した」と驚きをもって報じた。その内容も「本田の発言はクラブの未来を真剣に憂慮したものだ」と同調に近いものとなっている。

 その中で、メディアによる試合ごとの採点への批判だけは受け入れられないとしているが、全体的に本田の発言は「正論」という扱い。電子版には読者からも賛同する意見が書き込まれていることを見ても、ミランやイタリアサッカーが“末期症状”に陥っていることを否定する者は少ない。

 もちろん「ガゼッタ」紙でも、本田にはクラブ側から何らかの制裁があることも示唆している。それでも本田は信念を曲げるつもりはない。

「それにふさわしくない行動は取りたくない。それが自分のフィロソフィー(哲学)だから。自分の正義を貫くことが、今後自分にとっても、自分自身であり続けるためにも必要なことと思う」

 試合に出られない不満を口にした以上、出番を与えられた時にしっかりと結果を残さなければならない。シリアはここまで予選3試合で無失点の難敵だが、ここで活躍してこそ、これまでの発言の価値は高まる。「しっかり勝たないといけないという危機感は持っている」。日本代表のロシアW杯出場のため、そして自分の正当性を証明するため、本田は灼熱の地で全力を尽くす。