若武者ストライカーの争奪戦が始まる。ドイツ1部リーグのマインツに所属する日本代表FW武藤嘉紀(23)は、8月29日のハノーバー戦で移籍後初ゴールを含む2得点を決めて3―0の勝利に貢献した。海外デビュー間もないなかでの大活躍に地元では絶賛の嵐だが、その裏ではスター候補の“黄金の足”を狙って各スポーツメーカーが暗躍しているという。

 日本のスター候補が存在感を見せつけた。前半15分、DFラインをギリギリで抜け出して左足でシュートを決めると、同29分には頭で押し込み2ゴールを叩き出した。武藤は「海外は結果がすべてと先輩方からも言われていた。自信になる」と、晴れ晴れとした表情を浮かべた。

 ドイツリーグ公式サイトはこの試合のマン・オブ・ザ・マッチに選出し「(リーグ)3試合目で早くもドッペルパック(1試合2得点)を記録。日本人選手として最速記録」と伝えた。地元紙「ビルト」はチーム最高点となる1(最高が1、最低が6)と高評価。電子版では「初めてのムトーショー」と題して活躍を報じた。

 超イケメンで慶応大卒のエリート。2014年のプロ入り後はルーキーながら日本代表に選出されて、Jリーグベストイレブンも受賞した。2年目の今年7月には海外移籍を実現させるなど、まさに順風満帆のスター街道を突き進む。新天地でも真価を発揮したが、ピッチ外では“キナ臭い”動きがあるという。

 公認資格を持つ選手代理人は「以前からいくつかの(スポーツ)メーカーが武藤を狙っている。すでにスパイクはアディダス(ジャパン)と契約しているけど、ドイツに移籍し、注目度も高まっているからね。特にプーマは日本代表クラスの人気選手がどうしても欲しいみたい」と明かした。

 武藤はプロ入り後、MF香川真司(26=ドルトムント)やDF内田篤人(27=シャルケ)ら人気選手と同じアディダス・ジャパン社と契約し、スパイクなどの提供を受けている。だが、ライバル社がスター候補生の“強奪”をもくろんでいるという。

 特にプーマ社は“キング・カズ”FW三浦知良(48=J2横浜FC)や“ゴン”中山雅史氏(47)以降、日本代表のエース級との契約がないまま。昨年は日本代表のユニホーム契約(オフィシャルサプライヤー)をめぐり、アディダス社と最後まで争ったが、長期にわたり活躍が見込める武藤に狙いを定めたようだ。

 契約金も年間で推定5000万円以上を準備していると見られる。もちろん「アディダスが武藤を手放すようなことはないだろうけど」(同関係者)。他のメーカーが武藤を口説き落とすのは困難とされているが、活躍とともに激しいバトルに発展しかねない状況だ。