若武者ストライカーが自信喪失? 元日本代表FW武田修宏氏(48=本紙評論家)は、ドイツ1部リーグで“空回り”デビューしたマインツの日本代表FW武藤嘉紀(23)が苦悩する現状を明かし、緊急アドバイスを送った。またイングランド・プレミアリーグで初ゴールを決めたレスターの日本代表FW岡崎慎司(29)に改めて最大級の賛辞を寄せた。

<武田修宏の直言!!>武藤はヒザをケガしていた影響で少し出遅れていたため、待望のデビュー戦も、うまく試合に入れなかったね。0―1とリードを許した展開で投入されたけど、相手は引き気味でスペースもなかったし、チームともかみ合わずになかなか持ち味を発揮できなかった。

 マインツではチーム事情から、1トップで起用されてるけど、敵DFを背負いながらプレーするポスト役はまだまだ不慣れ。しかも試合終盤、敵DFはリードを守るためにファウル覚悟で1トップを潰しに来るので、正直きつかったと思う。武藤の武器であるスピードを生かすには、前を向いて勝負できるサイドかトップ下のポジションが適役じゃないかな。

 以前、当コラム内でも伝えたように、武藤が世界屈指の激しさを持つドイツリーグにフィットするには、少し時間が必要だと思っている。いきなり完璧なパフォーマンスを発揮するのはどんな選手でも難しいものなので、まずは一歩ずつ進んでいってほしい。

 そんな中、今最も心配なのは武藤のメンタル面。実は試合後の武藤から「初戦は難しかった。なかなかうまくいかないものですね」という内容のメールが届いた。初のリーグ戦出場もゲームの流れに乗れなかった自分に責任を感じているのか、少し自信を失っているように感じた。

 まだリーグ戦は始まったばかり。あまりにナーバスになると、プレー自体も消極的になってしまうもの。さらに調子を落としたり、悩みを深めれば、負のスパイラルに陥りかねない。だから武藤には「焦るな。自分を見失うのが一番良くない。まずは自分の持ち味を出せるように取り組んでほしい」という趣旨のアドバイスを添えてメールを返信した。

 新チームで認められるためには、一刻も早く結果が欲しいところ。だけど、焦っても空回りするだけなので、まずは落ち着いてやることが必要だろうね。ドイツの環境になじめれば、ゴールを量産できるようになるでしょう。

 リーグ2戦目でゴールを決めた岡崎のプレーは素晴らしかった。ドイツで実績を作り、イングランドに渡ったけど、どんな環境でも戦えることを証明したね。日本代表で最多得点記録(国際Aマッチ76試合75得点)を持つ釜本邦茂さんには申し訳ないけど、日本人最高のストライカーだと思っている。

 岡崎には速さや高さなど特筆する武器はないけど、ゴール前での動きだしのタイミングやポジショニングが絶妙。クロスボールに合わせるときも、DFとの駆け引きでマークを外したり、スピードに緩急をつけて、DFを惑わせている。現代サッカーで必要な技術はすべて兼ね備えている選手じゃないかな。

 実際、前線から献身的にボールを追い込む守備もうまいし、オフ・ザ・ボールでも先の展開を読み切ったかのような動きを見せる。一つひとつのプレーの精度も高く、すべての動きに無駄がない。同じFW出身者がテレビを見ていて「すげーな」とうならされてしまったほどだからね。

 彼の動きの質が世界トップクラスなのは間違いない。ハリルジャパンは決定力不足と言われているけど、岡崎が万全なら大丈夫。他のストライカー陣も岡崎のパフォーマンスを参考にして課題を改善してほしいね。

☆ 武田修宏:たけだ のぶひろ=1967年5月10日生まれ。静岡県出身。幼少期から「天才少年」と呼ばれたストライカー。名門・清水東(静岡)から86年 に読売クラブ(現東京V)入り。ルーキーながら11得点を挙げ、リーグVに貢献し、MVPにも選出された。Jリーグ発足後はV川崎や磐田、京都、千葉など でプレー。00年には南米パラグアイのルケーニョに移籍。01年に東京Vに復帰し、同シーズンで現役引退した。Jリーグ通算は94得点。JSL時代も含め れば152得点を挙げた。87年に日本代表に選出。93年米国W杯アジア最終予選でドーハの悲劇を経験した。

http://takeda.at.webry.info