東アジアカップ(8月1日開幕、中国・武漢)で連覇を狙うハリルジャパンに、思わぬ“難敵”が立ちはだかりそうだ。30日に現地へ出発。今大会は宿敵韓国をはじめ一筋縄ではいかない相手ばかりだが、ピッチ外にも危険な香りが充満している。武漢は中国でも有数の“反日都市”。日本で世論を二分するあの問題が背景にあるため、懸念が高まっているのだ。

 いよいよ決戦が迫るハリルジャパンだが、連覇のカギは現地の治安情勢が握っているといっても過言ではない。

「武漢は中国のなかでも特に反日感情が根強い地域の一つ。日本企業も多く進出しているが、現地の人間から嫌がらせや危険な目にあったという話は数えきれないほどある。日本代表チームがあそこで試合をするというのは、リスクがないとは決して言えない」と何度も現地を訪れた経験のある省庁関係者は不安視している。

 武漢は歴史的な経緯から反日感情が強い重慶から近いこともあり、同様に日本人を毛嫌いする風潮がある。いまだに「日本人お断り」の飲食店があるほどで、尖閣諸島の領有問題が起きた2010年10月には数千人規模の反日デモも発生。「日本人を殺せ!」と書き込んだ国旗を掲げるなど過激な運動を展開し緊張感が高まった。

 その後は経済交流の活発化で一時期ほど反日運動は見られなくなったが、今回の東アジアカップを前に大きな懸念材料が持ち上がった。

「安倍政権の安保関連法案を巡って中国政府は反発を強めていて、国民レベルでも反日感情が高まっている。場所が場所だけに、注目を集めるイベントをきっかけに暴発しかねない」と同関係者。重慶では04年のアジアカップで中国人の集団が日本人サポーターを取り囲む騒動も起きており、サッカー熱が高い中国での大会は不測の事態が起こりかねない。

 代表チームに狙いを定めて宿舎周辺でデモを行ったり、練習場やスタジアムに押しかけての挑発行為、バスの取り囲みなどは想定しなければならない範囲。さらに一度火がつくと手がつけられない国民性の民衆が暴徒化すれば、選手やスタッフの身に危険が及ぶ可能性も否定できない。

 実際、バヒド・ハリルホジッチ監督(63)は中国との試合には「政治的な要因も入ってくるのではないかと予想している」と警戒感を強めている。協会関係者も「反日感情が強い地域みたいだね」と不安を隠さない。

 ハリルジャパンにとっては大きな試練。優勝カップを手にするまでの道のりは険しそうだ。