なでしこジャパンの佐々木則夫監督(57)が“二匹目のドジョウ”を狙っている。東アジアカップ(8月1日開幕、中国・武漢)に向けた合宿(名古屋市内)で、若手有望株のMF京川舞(21=INAC神戸)をサイドハーフからサイドバックにコンバートした。次期エース候補のポジションを大胆に変えた理由はどこにあるのか。指揮官は女王MF澤穂希(36=INAC神戸)の“再現”を画策しているというのだが――。

 決戦地・中国への出発を翌日に控えた28日、名古屋市内で行われた地元高校生とのミニゲームの最中、佐々木監督が左サイドハーフでプレーしていた京川に左サイドバックでのプレーを指示。持ち前のスピードを生かし、前線への鋭い上がりを見せた京川へ指揮官は熱視線を送った。

 京川にとってこのポジションは、ほぼ初めての経験となる。常盤木学園高(宮城)ではバリバリのFWで、所属のINAC神戸では主に左サイドハーフでプレー。今年2月に行われたラ・マンガU―23女子国際大会で右サイドバックを経験したくらいだ。それでも、佐々木監督が東アジアカップ直前にコンバートを実行したのは、来年のリオ五輪金メダルを見据え、世代交代を伴うチームの底上げに迫られているからだ。

 あるJクラブ関係者は「佐々木監督は(2011年ドイツ)W杯で優勝してから世代交代に失敗してきたけど、リオもカナダ女子W杯のメンバーのままではまずいと思ったから、東アジアカップはフレッシュなメンバーになった。もちろん結果を求められているし、なんとかしないといけない気持ちが、京川のコンバートでチーム力をアップさせる狙いもあるんじゃないか。澤の成功例みたいにね」と指揮官の意図を推測する。

 佐々木監督はかつてトップ下に君臨した澤を守備的MFに転向させ、ドイツ女子W杯優勝につなげた。澤のボール奪取能力など守備のセンスを見抜いた結果だが、京川もドリブルやスピード、FWとして培った裏へ抜け出すタイミングなどがサイドバックとしても十分通用すると判断した。なかなか世代交代が実現しないなでしこにおいて、次期エース候補の大胆コンバートでチーム内を活性化させようということだろう。

 京川は「不慣れなポジションだけど、サイドチェンジの時は相手の裏をつくようなプレーをしたいなと思う。『走れ』と言われているので、体力の部分では人並みより上なので走れると思う。いろんなポジションをできたほうが選んでもらえると思うし、プレーの幅を広げていきたい」と戸惑いを見せつつも、新たなポジションに適応していくつもりだ。

 東アジアカップでサイドバックとしてのメドが立てば、ベンチ入りメンバーが18人(通常は23人)となるリオ五輪に向けても大きな収穫。名将の“マジック”が再び炸裂するのか。