若き和製ストライカーに不安あり。FC東京からドイツ1部リーグのマインツに移籍した日本代表FW武藤嘉紀(22)が、新天地で再スタートを切った。練習ではキレのある動きを披露して高い評価を受けているが、元日本代表FW武田修宏氏(48=本紙評論家)は意外にも苦しい戦いを強いられると予想する。武藤と親交のある武田氏が指摘する“3つの問題”とは?

【武田修宏の直言!!】武藤は俊敏性とスピードが武器なので、カウンターを主体とするマインツのスタイルには合っていると思うね。ポジションも攻撃的な位置であれば、どこでもこなせるから問題なし。何よりマルティン・シュミット監督(48)の評価が上々だから、あとはチームに溶け込むだけでしょう。

 ドイツでも日本と同じような活躍を期待しているけど、いきなりは難しいかもしれない。特にFW岡崎慎司(29)の存在が武藤を悩ませるんじゃないかな。

 2季連続で2桁ゴールを挙げたマインツの前エースは、レスター(イングランド)に移籍。プレーのタイプこそ異なるものの、同じ日本からの助っ人とあって常に比較されるのは間違いないからね。

 武藤は海外初挑戦。シュツットガルト(ドイツ)で約2年半プレーした後にマインツに移った岡崎とは経験値で大きな差がある。それなのにチーム内外で「オカだったら…」と言われるのは苦痛だろうし、同じ働きを求められるのはつらいもの。予想以上の大きな重圧になるだろうね。

 2つ目は、大きな壁にぶち当たった時に、どう乗り越えていくか。ドイツでは大柄な選手が多く、これまでは通っていたパスがカットされることも珍しくない。GKも屈強で俊敏だから、かなり戸惑うはず。また、時には指揮官の無謀な要求に応えないといけないし、自分のスタイルと違うプレーを求められる場面も多々ある。

 こうした問題に直面したとき、メンタルを強く持ったり、練習に没頭したりと、選手個々で克服するすべがあるもの。だけど武藤はプロになってから大きな挫折をしていないので、這い上がる方法を持ち合わせていない。とにかく真面目な性格だから、思い詰めてしまうかもしれないよ。そこが心配なところだね。

 3つ目は、地元メディアとサポーター。日本とは違って評価が辛辣だし、少しでもミスをすればボロクソに叩かれる。高額な移籍金(推定4億円)を払って獲得した新戦力は「働いて当たり前」と思っているから、見る目も自然と厳しくなり、日本では体感したことがない“外圧”にも耐えないといけない。

 武藤も覚悟の上で移籍したと思うけど、最初の半年間は苦しむだろうね。でも結果を出せばすぐに払拭できるし、悩んだら同じドイツでプレーする日本代表主将のMF長谷部誠(31=Eフランクフルト)やMF香川真司(26=ドルトムント)に相談すればいい。

 最初からうまくいく選手なんて少ないんだから、まずは思い切ってプレーしてほしいな。

 ☆武田修宏:たけだ のぶひろ=1967年5月10日生まれ。静岡県出身。幼少期から「天才少年」と呼ばれたストライカー。名門・清水東(静岡)から86年に読売クラブ(現東京V)入り。ルーキーながら11得点を挙げ、リーグVに貢献し、MVPにも選出された。Jリーグ発足後はV川崎や磐田、京都、千葉などでプレー。00年には南米パラグアイのルケーニョに移籍。01年に東京Vに復帰し、同シーズンで現役引退した。Jリーグ通算は94得点。JSL時代も含めれば152得点を挙げた。87年に日本代表に選出。93年米国W杯アジア最終予選でドーハの悲劇を経験した。

http://takeda.at.webry.info