【なでしこジャパンの光と影】世代交代失敗の裏に協会の愚策

2015年07月10日 10時00分

世代交代を画策した佐々木監督(右)だが、周囲の思惑に阻まれた

【なでしこジャパンの光と影(下)】カナダ女子W杯で準Vに終わったなでしこジャパンの次なる目標は来年のリオ五輪だ。まずは来年3月の五輪アジア最終予選突破が最初の関門になるが、その前にクリアしなければならない大きな課題がある。今回のW杯で克服できなかった「世代交代」――。緊急連載最終回はなでしこ最大の問題点に迫る。

 

 2012年8月26日、ロンドン五輪で銀メダルを獲得したなでしこジャパンの佐々木則夫監督(57)は国立競技場のスタンドにいた。日本開催となったU―20女子W杯で「ヤングなでしこ」と呼ばれた日本代表がスイスに4―0で快勝。MF田中陽子(21=ノジマステラ神奈川相模原)が左右両足で直接FKを決める離れ業を見せ、スタンドは沸いていた。

 

 その帰り道、佐々木監督は本紙の取材にポツリとつぶやいた。

 

「冷静な記事を頼むよ」

 

 ロンドンの結果を踏まえ、世代交代の必要性を感じていた。そんななかで行われたU―20W杯は新戦力発掘の絶好の場。だが、名将は感じていた。「この世代の選手は本当の世界の戦いでは勝てない」。だからこそ、大活躍の田中陽子を必要以上にもてはやす報道は見たくなかった。

 

 この時点で監督を続投する意思はなかったが、その後まさかの続投要請。W杯連覇を期待され、勝てるチームづくりを求められた。

 

 今のままでは、若手はなでしこのメンバー選考にすら食い込めない。そう感じた佐々木監督は一度チームを壊し、ベテランを外して将来有望な若手選手だけでチームを組むプランを訴えた。ところが、協会幹部はこの申し出を拒否。広告代理店、スポンサー筋からは「次の大会、遠征ではこの選手を使ってほしい」と有名選手の起用を懇願され、構想は崩壊した。

 

 協会の愚策は、佐々木監督の後継者育成先送りという形でも表れた。さらに、協会の威信をかけて設立した「JFAアカデミー」の出身者は伸び悩み。あるなでしこOGは「エリート教育だけでは、厳しい環境を生き抜いてきた野武士のような今のなでしこの主力たちには永遠に勝てない。世代交代の失敗が全部ノリさんのせいにされるのは気の毒」と若手が育たない現状を憂いている。

 

 世界大会3連続ファイナリストの栄光は、なでしこジャパンにとって“終わりの始まり”なのかもしれない。