なでしこは世界一を奪還できるのか。サッカー・カナダ女子W杯で準優勝に終わったなでしこジャパンが7日、帰国した。最大のライバル米国に完敗を喫して連覇を逃しながらも、世界大会3連続ファイナリストの偉業をたたえる声が多いなか、絶対エースのFW大儀見優季(27=ボルフスブルク)はこの風潮を疑問視。今大会の結果を分析したうえで、来年のリオ五輪と4年後のフランス女子W杯に向けて“逆襲への秘策”を語った。

 4年前に続く優勝カップこそ持ち帰れなかったが、最後まであきらめない戦いを見せたなでしこジャパンに対し、成田空港で出迎えた約500人のファンの声は温かかった。「正直、みんなをがっかりさせてしまって申し訳ないと思って帰国したので、着いてみて皆さんの反応に驚いた」とFW大野忍(31=INAC神戸)が話すように、選手からは戸惑いの表情すらうかがえた。

 2011年ドイツW杯優勝、12年ロンドン五輪銀メダル。そして今回の準優勝。日本サッカー協会の大仁邦弥会長(70)が「3大会連続で決勝(進出)ですから、本当によくやっている」と称賛するのも当然の成績で、米国に2―5と大差で敗れた結果を非難する声は今の日本ではほとんどない。3月のアルガルベカップ(ポルトガル)で9位と惨敗し、W杯上位進出は厳しいと見られていただけに、なおさらだ。

 だが、そんな雰囲気に大儀見は違和感でいっぱいだ。「もし私がこの中(なでしこジャパン)にいなくて、客観的に見たら決勝進出はすごいことかもしれない。でも自分たちからすれば、常にそこを目指してやっているわけだし、苦しんで練習もやっている。だから決勝進出は当たり前の結果」とし、敗戦に対する意見が少ないことを指摘した。

 すべては自身が満足いく結果を残せなかったことの反省からきている。「私は米国との差が広がったかと聞かれれば、決勝の結果はたまたまではないわけで、これが本当の差」(大儀見)と最大のライバルの力は認めた。だからこそ「負けたことは自信を持って受け入れるべき。やるべきことをやった結果の負けだから。個人的に米国に対して何もできなかったとは思わない。これからまた、その相手をどう倒すか考えていく」と対抗心を燃やした。

 主将のMF宮間あや(30=岡山湯郷)が引っ張ってきたチームを引き継ぐつもりでいる。「年齢を重ね、時がたてば立場も変わる。今以上に自覚と責任感を持ってやらなければならない」と大儀見は次期主将に“立候補”した。チームをまとめる難しさは宮間を見て痛いほど理解するが「私個人のことは置いておいて、まずは周りのこと。選手だけでなく、スタッフへの配慮などもしっかりやっていかないといけない」と宮間流を継承した新たなチームづくりを誓った。

 来年の五輪アジア最終予選に向けては「それよりも、次のシーズンに向けてどうするかという気持ちのほうが今は強い」と明言を避けた。それでも、近い関係者には個人のスキルアップだけではなくドイツで世界の女子サッカーの情報収集を今まで以上に進める方針を明かしている。

 宮間が実践したコミュニケーション重視のチームづくりに、サッカー大国ドイツを利用した世界戦略。絶対エースは再び世界の頂点に立つため、なでしこを大胆につくり替える。