【なでしこジャパンの光と影】佐々木監督23人全員起用の真実

2015年07月09日 06時00分

【なでしこジャパンの光と影(中)】カナダ女子W杯で準優勝したなでしこジャパンが7日に帰国。世界大会で3大会連続ファイナリストになった佐々木則夫監督(57)の手腕は改めて高く評価されたが、今大会前にはある発言を耳にし、自信を失っていたという。緊急連載の2回目は「ノリオ采配の真実」。世界から称賛された登録23選手全員の起用も、実は苦肉の策だった――。

 

 発端は、ある選手が発したひと言だった。

 

「澤さんの時代はもう終わりですよ」

 

 佐々木監督が直接聞いたわけではないが、関係者から伝えられたこの言葉に衝撃を受けた。評論家やメディアの意見ならまだわかるが、よりによってこれからW杯をともに戦おうという仲間からの発言。チームに亀裂を生みかねないだけに、その後の対応は慎重にならざるを得なかった。

 

 1年ぶりにMF澤穂希(36=INAC神戸)を代表に復帰させ、W杯連覇の切り札にすると決断。年齢面の不安はあるものの、澤の経験とコンディションの良さは無視できず、最後は自分の勝負師の勘に頼った。それは全選手に受け入れられるとも思った。だが、そうではなかったことで、W杯に向けたチームづくりの軌道修正を迫られた。

 

 チームの不満分子をどうやってなだめればいいのか。4年前のドイツW杯ではピッチ外の選手管理を、昨年限りで引退したベテランGK山郷のぞみさん(40)に任せたことで、自分は采配に集中できた。おかげで、試合に出場できない選手のストレスが表に出ることはなく、チームの団結力は高められた。

 

 だが、今回のチームに山郷さんのような存在はおらず、指揮官は全員をまとめられる自信がなかった。主将のMF宮間あや(30=岡山湯郷)にさらなる負担もかけられない。そこで出した答えが「全員を平等に起用する」というものだった。

 

 チーム内にあった不満の原因は主に2つ。まずは一定の選手に肩入れしすぎること、そしてレギュラーとサブをハッキリ分けることだ。この2つを解消するため、佐々木監督はW杯1次リーグ3試合で23選手全員に出場機会を与えた。「全員にW杯の空気を感じさせたかった」というコメントは表向き。

 

 実際は戦力把握やチーム力向上でも何でもなく、不満分子の“ガス抜き”だった。

 

 決勝トーナメントは一発勝負のためレギュラー組を固定したが、サブ組は献身的にチームを支え、チームは団結した。海外メディアから「奇跡の采配」と言われた名将の一手は、チームの崩壊を防ぐ最終手段にすぎなかったのだ。