【カナダ・エドモントン30日(日本時間1日)発】ついに魔球FKを解禁! なでしこジャパンはカナダ女子W杯準決勝(1日=同2日)で、過去2分け2敗と勝利のないイングランドとの大一番に臨む。キャプテンのMF宮間あや(30=岡山湯郷)は封印していた通称「ブレ球」の解禁を決意。“悪魔の右足”でファイナル進出をつかむつもりだ。

 宮間は世界的なFKの名手。かつてFKで世界を席巻した元日本代表MF中村俊輔(37=横浜M)にちなみ「女俊輔」と呼ばれるほどだ。なでしこジャパンでも得意のキックから数々のゴールを演出してきた。英紙「デーリー・メール」も28日付で「世界最高の選手の一人。さらにセットプレーでも危険な存在である」と高く評価している。

 本人もイングランド戦に向け「毎日強くなりたいと思っているからここまで勝てている。(セットプレーを)もっとブラッシュアップしていく」と、自らのFKに磨きをかけると宣言。詳細については明かさなかったが、ここまで封印してきた魔球と呼ばれるブレ球を使用する準備を整えたようだ。

 ブレ球は、高速無回転で放たれたボールが予測不可能な軌道を描き、GK手前で不規則に変化する。男子では日本代表FW本田圭佑(29=ACミラン)を筆頭に、ポルトガル代表FWクリスチアーノ・ロナウド(30=レアル・マドリード)らが得意とする魔球だ。

 一方、女子では無回転キックを駆使できる選手はあまりいない。それだけになでしこにとっては大きな武器となるが、宮間が封印してきたのには理由がある。ブレ球を蹴るには軸足の踏み込みやインパクトの際、体中のパワーを結集する必要があり、筋力の弱い女子には想像以上の負担が足にかかるためだ。男子でも負傷のリスクがあるほどで、練習からして何度も蹴れるものではない。

 2011年のドイツW杯後から習得に取り組んだ宮間は、12年ロンドン五輪準決勝フランス戦でブレ球を蹴ってゴールを演出。だが、これまでなでしこでは数えるほどしか披露していない。ブレ球FKで直接ゴールを決めたのは昨年3月のアルガルベカップ・米国戦が最後。以降、国際舞台では封印してきた。

 しかし2連覇に向けた戦いは佳境に入り、もはや出し惜しみする必要はない。所属クラブでは同僚のGK福元美穂(31)を相手に練習を続け、精度は高まっている。かねて宮間はFKについて「責任を持ってやっている」と話しており、不動のキッカーとして真価を見せつけるつもりだ。

 背番号10を背負うMF澤穂希(36=INAC神戸)もセットプレーを「あやに任せておけば大丈夫」と話すように、チームメートからの信頼も絶大。宮間は準々決勝のオーストラリア戦(27日)でも後半14分、ヒールで絶妙のシュートを放っており“悪魔的プレー”の引き出しは多い。この日の午前中、約1時間の最終調整を終えた後は「イングランドはセットプレーからの得点が多く自信を持っている。身長ではかなわないけれど、準備の早さと動くことで対応したい」と決意を新たにした。宮間の右足が決勝への扉をこじ開ける。