8強芸術弾の阪口“佐々木監督を拒絶”の真相

2015年06月26日 06時00分

【カナダ・バンクーバー24日発】2人の孝行娘がW杯連覇の夢をつないだ。カナダ女子W杯決勝トーナメント1回戦でなでしこジャパンはオランダに2―1で勝ち、2大会連続で準々決勝に進出した。1次リーグでは得点力不足に悩まされたものの“新シンデレラガール”DF有吉佐織(27)とMF阪口夢穂(27=ともに日テレ)の劇的弾で白星をつかんだ。その阪口は佐々木則夫監督(57)に“反抗”を続けていた。本紙だけが知る阪口の思いとは――。

 試合後、佐々木監督が開口一番「すみません。最後、いつもハラハラ、ドキドキさせてしまって」と話して苦笑いしたのが、この日の試合を物語っていた。

 前半10分に有吉の豪快なシュートで先制しながら、オランダに押し込まれて苦しい時間帯だった後半33分に阪口の左足ミドル弾で追加点。完勝ムードだったが、後半アディショナルタイムにGK海堀あゆみ(28=INAC神戸)の凡ミスで失点。終わってみれば4試合連続の1点差勝利という結果だった。

 準々決勝以降の戦いを見据え、MF澤穂希(36=INAC神戸)を温存し、守備的MFは阪口とMF宇津木瑠美(26=モンペリエ)のコンビ。佐々木監督のこの采配が当たった。1次リーグ最終戦のエクアドル戦から中6日。大半を非公開練習にし、タッチ数を限定した紅白戦などを実施したこともあって、なでしこ特有のパス回し、選手同士の連動がよみがえった。なかでも、前日の公式会見で「ミドルシュートを決めてくれれば」と期待していた阪口が試合を決定づけるゴールを奪ったことで、指揮官は満足げな表情だった。

 期待に応えた阪口だが、実は佐々木監督に対して“拒絶反応”を示したことがあった。2012年ロンドン五輪後、佐々木監督の続投が発表された時に多くの選手が驚きの声を上げたが、一番反応していたのが阪口だった。「ロンドンでやめるって言うたやん」と他の選手にグチをこぼしていた。

 阪口の名誉のために断っておくが、佐々木監督が嫌いというわけではない。「あの練習をまたやるのか、というのが頭に浮かんだんです。だから思わず…」と後日語ったように、自分自身が再び厳しい戦いに身を置くことへの覚悟に欠けていただけだった。「攻守にアクションする」という佐々木監督の戦術を体現するには、厳しい練習が必要。世界のサッカーがなでしこを意識したものになっており、監督交代で別の戦術の導入も期待していたことも理由の一つだった。

 阪口は09年に米国2部リーグ「Wリーグ」のFCインディアナに移籍したが、開幕から2試合出場したところで左膝前十字靱帯断裂の重傷を負い、戦線離脱。それから一時行方不明になり、日本協会の上田栄治女子委員長(当時)が中心となって阪口を“捜索”するという事態に発展した。

 結局、阪口は帰国して国内で手術を受けていたことがわかって一安心だったが、佐々木監督がかなり心配していたことを後に知った阪口は、その期待に何とか応えたい一心でなでしこの戦いに挑んできた。

 今では2人の関係は絶妙だ。試合前日会見で注意すべき点を問われた佐々木監督が「荷物を整理しようかと考えている」と話すと、すかさず「(報道陣の)反応薄いですよ」と阪口が鋭い突っ込み。監督が準々決勝の会場を「モンクトン」と言うと「ちゃうちゃう、エドモントン!」と返し、外国メディアも笑いの渦に巻き込んだ。

 厳しい練習は好きではないが、何とか耐え抜いて今大会最高の内容で勝利をつかんだ。一度は拒んだ監督とともに、阪口はW杯連覇への道を歩み続ける。