サッカー界に激震が走った。米司法省は27日、組織的な違法行為と贈収賄の容疑で国際サッカー連盟(FIFA)関係者9人を含む計14人を起訴したと発表した。このうち現職FIFA副会長2人ら7人がスイス・チューリヒで逮捕された。2018、22年W杯開催地選定に関する不正だけでなく、過去の会長選挙に絡む疑いもかけられ、FIFA総会での会長選挙(29日)で5選を目指すゼップ・ブラッター会長(79)体制の崩壊は時間の問題。今後、日本にも影響が及ぶ可能性が出てきている。

 今回逮捕されたのは、ウルグアイ人のエウヘニオ・フィゲレド副会長(83=元南米連盟会長)と、ケイマン諸島出身のジェフリー・ウェブ副会長(50=北中米連盟会長)ら7人。さらに、元副会長のジャック・ワーナー氏(72)や元南米連盟会長のニコラス・レオス氏(86)などFIFA関係者9人を含む、14人が起訴された。

 FIFAの幹部らには1991年から24年間で、賄賂として1億5000万ドル(約185億円)以上が渡った。見返りに国際大会でのスポンサー権などを与えたとしている。2010年W杯開催国選定や11年のFIFA会長選挙に絡む疑いもある。

 この件とは別に、スイスの検察当局は18、22年の両W杯招致に関連した不正や資金洗浄容疑で捜査を開始し、FIFA本部から電子データや文書を押収したと発表した。「金権体質」を批判されるFIFAが、ついに公的捜査機関の追及を受けることになった。

 FIFAのデグレゴリオ広報ダイレクターは記者会見で「FIFAは被害者」としたうえで、18年のロシア、22年のカタールの両W杯の開催に変更はないとした。ブラッター会長は「両当局の調べはFIFAが既に取り組んできた不正撲滅を加速させる」との声明を出し、捜査に協力する姿勢を打ち出した。

 だが、今の「金権体質」を作り上げたのは、まぎれもなくブラッター会長。29日の会長選でブラッター会長の対抗馬となっているヨルダンのアリ王子は27日、ツイッターで「FIFAの危機は現在進行形で、今日の出来事に限ったことではない。危機を抱えたまま続けていくことはできない」と改革の必要性を訴えた。

 そもそも、現職の副会長が2人も逮捕される前代未聞の事態で、会長が何も責任をとらないというのは組織の体をなしていない。米国のリンチ司法長官が会見で「世界のサッカー界にはびこる不正を根絶する」と語ったことで、今後、ブラッター会長にも捜査が及ぶ可能性もある。

 今回逮捕、起訴されたフィゲレド副会長やレオス元会長と懇意にしていたのが、11年までFIFA理事を務めた日本協会の小倉純二名誉会長(76)。在任時は常にFIFA内で「オグラはクリーンな男だ」と言われ続けた。だが、組織の人間がクリーンなのは当たり前。それがわざわざ強調されること自体、組織が腐敗していた証明でもある。

 いずれにしても現体制の崩壊は免れない状況。FIFAは“クリーンで透明性のある組織”を目指すことが求められる。そうなると「世界のサッカー関係者は日本に注目する。小倉さんのクリーンさはもちろん、数多くの大会を運営しながら失敗例がないのだから“困ったら日本に何とかしてもらおう”という傾向は高まるのでは」(日本協会関係者)。

 日本は12年9月、ウズベキスタンがホスト国を返上したU―20女子W杯を開催。急きょ決まった大会で低予算の運営を強いられたが、成功を収めた。女子の年代別大会とはいえ“カネのかからないW杯”を開催し、FIFA幹部も絶賛。以後、同大会はFIFA主催大会のモデルケースとなった。

 総会では、田嶋幸三副会長(57)が4年ぶりに日本からFIFA理事に就任する。今回の件については「驚いた。しっかり捜査してもらって、うみを出し切る必要がある」と述べたが、今後のFIFA運営のカギを握る存在になるかもしれない。