クイーンの「神対応」がチームをよみがえらせた。女子サッカーの国際親善試合(24日、香川県立丸亀競技場)で、なでしこジャパンが1―0でニュージーランド女子代表に勝利。1年ぶりに代表復帰を果たしたMF澤穂希(36=INAC神戸)は代表通算83点目となる決勝点を奪い、男女を通じた日本代表最年長得点記録を更新した。この獅子奮迅の活躍には佐々木則夫監督(57)も脱帽。連覇を狙う6月のカナダ女子W杯での選手起用プランとして「澤シフト」を敷く考えを示した。

 丸亀で行われたサッカーの試合としては史上最多の1万4154人のサポーターの願いを、なでしこの「背番号10」はいとも簡単にかなえた。

 リズムがつくれずに苦戦していた中で迎えた前半24分、MF宮間あや(30=岡山湯郷)のCKを中央で右足で合わせてゴール。36歳260日でのゴールはラモス瑠偉氏(J2岐阜監督)が36歳85日でマークした日本代表最年長得点記録を更新し、澤は「あまり数字のことは考えていないけど、今までにいないというのは光栄なこと。これからも1点でも多く積み上げていきたい」と喜んだ。

 澤の代表復帰は確実にチームに変化をもたらした。試合前、FW安藤梢(32=フランクフルト)と「戦う姿勢を見せていこうね」と約束し、相手のボール保持者に真っ先にチャージする姿勢を前面に押し出した。ボランチでコンビを組んだDF川村優理(26=仙台)にも「あそこまでやらなきゃいけないと感じた」と思わせ、“非ドイツW杯組”の選手への闘魂注入に成功した。

 大黒柱が戻ってきたことで主将の宮間の負担も激減。攻撃的MFとして様々なアイデアを出したプレーを展開し、好機を何度も演出した。CKの蹴り方も工夫し、左右で打ち分けることで相手守備をかく乱。さらに「カナダW杯スペシャル」と呼ばれる新セットプレーの開発に着手することもできた。

 MF川澄奈穂美(29)は「澤さんがおとりになって相手を引きつけ、いつも澤さんが飛び込むニアの位置に私や別の選手が入る。相手が持っているイメージがあるから効果はあるはず。フフフ…」。澤が4年前のドイツW杯決勝・米国戦で見せたゴールのイメージを逆手に取ったパターン。精神的な負担も軽くなった宮間がキックの精度を高めており、相手に脅威を与えるのは間違いない。

 ここまでの活躍を見せられては、メンバー発表前から澤と“確執”があった佐々木監督も「澤の、神のようなゴール」と脱帽。当初は後半途中での交代を考えていたが、あまりの出来の良さと影響力の大きさを感じてフル出場させた。しかも、今後の起用プランも「(この日ケガで不出場だった)阪口(夢穂)が戻ってきたらローテーションさせる。今日は彼女(澤)の意地を見た。自信をつけてもらってW杯でもやってもらいたい」とVIP待遇を示唆。澤をボランチの軸として考え、相棒を試合によって変える方針を示した。

 1年離れていても、戻ってくれば今まで以上の成果を残す。なでしこジャパンの大黒柱として澤が見せた姿勢は、チームに大きな活力をもたらした。