果たして天国か地獄か――。2018年ロシアW杯アジア2次予選の組み合わせ抽選会が14日にマレーシア・クアラルンプールで行われ、日本はシリア、アフガニスタン、シンガポール、カンボジアと同じE組に入った。強豪や苦手とする国もなく恵まれた組み合わせになったが、一方で政情不安のシリアとアフガニスタンとの対戦が決定。日本はピッチ外の“脅威”にさらされることになる。

 組み合わせが決まった直後に会見したバヒド・ハリルホジッチ監督(62)は開口一番「いいグループに入ったかなと思う」とホッとした表情を浮かべた。

 それもそのはず、前回ブラジルW杯の3次予選で敗れた北朝鮮、サウジアラビアやヨルダンといった中東の強豪国との対戦を軒並み回避。同組の対戦国の中で最も国際サッカー連盟(FIFA)ランキングが高い126位のシリアですら通算成績7勝1分けと圧倒しており、日本の優位は揺るがない。「彼らはある程度のクオリティーはあるが、我々のレベルにあるとは思わない」と指揮官が話したのは偽らざる本音だろう。普通に戦えば日本が余裕をもって最終予選に駒を進めるはず――。だがそれは無事に試合にこぎつけ、何事もなく終えられたらの話だ。

「シリアにはISIL(イスラム国)、アフガニスタンにはタリバンの人間が数多くおり、中東全土にはアルカイダ系組織が点在、潜伏している。もちろん日本代表が両国に行くことはないだろうが、たとえ他国で試合をしたとしてもテロリストがサポーターに紛れることは可能だし、リスクは確実にあるのではないか」と外務省関係者は指摘する。

 シリアではイスラム過激派組織イスラム国によるテロが頻発。アフガニスタンも過激派組織タリバンがテロ活動を続けており、外務省も全土で「退避勧告」を出しているほど危険な状況にある。そのためアウェーでの試合は第三国での中立国開催が濃厚だが、だからといって安心はできない。

 開催地はアジアサッカー連盟と当該国が協議して決めるため、アフガニスタンやシリアは自国での開催が不可能でも隣国などなじみのある国での開催を強硬に主張することは必至。またどこで試合をしても、ファンやサポーターにテロリストが交じって会場内やその周辺でテロを計画する可能性は十分ある。

 第三国の場合は当事国開催時より警備態勢が手薄になり、そこを狙ってくることも考えられる。試合が終わっても、帰路の航空機ですら安泰ではない。観戦に訪れるサポーターの安全の保障もできない。アウェーでの試合には相当な危険がつきまとうのだ。

 そしてテロリストにとってW杯予選の日本戦は格好の標的となる。

「ISILは効果的なテロの標的として日本人を狙っている。また、タリバンの思想はスポーツなどの娯楽を禁止しているため、スポーツイベントが標的になる危険性は常にある」(前出の関係者)

 後藤健二さんや湯川遥菜さんを殺害したイスラム国は、日本人を標的とすることを宣言。アジアの先進国で欧米諸国と緊密な関係にある日本をテロの標的とする効果は絶大と考えており、それはアルカイダ系組織やタリバンも同様。注目を集めるサッカーW杯の予選ともなればなおさら世界に与える衝撃も大きいだけに不安は増すばかりだ。

 両国の政情不安についてハリルホジッチ監督は「私はすでに戦争を経験している。新しいことではない」と強気に言い放ったが、日本にとっては試合よりもピッチ外の対策が急務となりそうだ。