サッカー日本代表は3月31日、国際親善試合のウズベキスタン戦(東京・味の素スタジアム)で5―1と圧勝し、初陣のチュニジア戦(同27日)から2連勝。新戦力が躍動しての大勝でハリルジャパンは好発進したが、エースFW本田圭佑(28=ACミラン)だけは完全に蚊帳の外。死守してきたFKキッカーの座を“剥奪”され、バヒド・ハリルホジッチ監督(62)が標ぼうする堅守速攻スタイルにも適応できなかった。エースには危機感と苦悩が渦巻いている――。

 初陣のチュニジア戦からスタメンを全員入れ替えて臨んだ2戦目は、3人の選手が代表初ゴールを決め、途中出場した選手も次々に得点を重ねた。ハリルホジッチ監督の考えを具現化する“新鮮力”の活躍もあって、懸念されてきた決定力不足の解消を印象づけた。

 ハリルホジッチ監督は満面の笑みを浮かべ「良い試合をしたし、後半は効果的で素早い攻撃ができた。スペクタクルなものでした。選手たちには『ブラボー』と言いたい。本当に素晴らしい出発だと思う」と上機嫌でまくし立てた。

 まさに上々のスタート。新生日本代表「ハリルジャパン」には期待が集まるが、一方で顔色が冴えないのがエースの本田だ。途中出場で1ゴール1アシストを決めた初戦から一転、見せ場をつくれなかった。最大の武器のFKでもキッカーの座は指揮官からの指名制となり、事実上“剥奪”された。前半1分、絶好のFKのチャンスにはキックが不得手のMF香川真司(26=ドルトムント)が担当し、CKでも出番は回ってこなかった。

 常に「横一線」を強調する“ハリル流”では、日本のエースにも結果が求められる。それだけに試合後の本田はもどかしい心境を吐露した。

「勝てたのはうれしく思うが、監督がやろうとしていることを出せたかといえば、まだまだ質が足りない。個人としてチームとして感じた。この結果で僕がポジティブになる必要はないのかなと」

 さらに“ハリルジャパン”の新戦術「堅守速攻スタイル」にも言及。周囲はうまくフィットするなか、スピードタイプではない本田は「トップスピードでやると足りない部分が見える。例えばブラジルとかなら裏へ抜けるスピードがあるわけだし、テクニックだけで全ての質が変わるのは考えにくい」とカウンター戦術への適応には苦労している様子だ。

 さらにハリルホジッチ監督の掲げた「個人ではなくチームとして戦う」という新方針や、積極的に加速させている「世代交代」というテーマにも微妙な表情を見せ「日本のサッカーに何が必要なのか。自分の中でまだ明確にはなっていない」。どうしたら新生日本代表に貢献できるか結論が出ていないという。

 とはいえ、ハリル流と決別する気はない。「新しい自分にトライしてきたということは以前から言ってきたこと。今がその過程であることは間違いない」と今後も前向きにニュースタイルを模索していくというが…。絶対エースをも苦悩させ、自ら“居場所”を見つけざるを得ない異常事態。これが“奇術師”ハリルホジッチ監督のやり方ということか。