「軽症」香川が欠場した本当の理由

2012年09月15日 12時00分

イラク戦をスタンドで観戦した香川

 日本代表で10番を背負うFW香川真司(23=マンチェスター・ユナイテッド)の欠場が大きな波紋を広げている。ブラジルW杯アジア最終予選(11日、埼玉スタジアム)で日本代表はイラクに1―0と勝利したが、エースの香川が腰痛のためベンチ外となった。とはいえ、腰痛は深刻なレベルではなく、強行出場は十分可能な状態だった。絶対に負けられない試合でエースが欠場した「本当の理由」に迫った――。

 非常事態だった。ジーコ監督(59)率いるイラクとの大一番に、10番を背負うエースがベンチにいない。前日(10日)の練習で腰を痛めた香川は「ギリギリまで治療したけど、迷惑をかけるよりは…と思ったので」と回避の経緯を説明したが…。

 日本代表ではプレーに精彩を欠き、前哨戦となった6日の親善試合UAE戦でも前半だけで途中交代。チームメートからスタメン落ちの危機を指摘されるほどだった。ただでさえ置かれた立場は厳しい上に、この日の負傷欠場に「ケガなら仕方ないとはいえ、W杯に懸ける思いはどうなの?という思いはなくはない」(代表選手)との声まで飛び出した。

 W杯アジア最終予選は日本代表にとって絶対に負けられない大事な試合。誰でも多少のケガは抱えているだけに、痛みを押して強行出場する選手は少なくない。元日本代表OBも「調子に乗れていない選手を無理して使う必要もない。大事な試合だけど、無理しなくていいという判断でしょう」と皮肉を込めた。

 当然、香川もこうした厳しい声が上がるのは覚悟していたはずだ。それでも無理をしなかったのには、香川が所属する世界屈指のビッグクラブであるマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)の存在がある。今回の代表合流前にはマンUのアレックス・ファーガソン監督(70)が「香川の回復力は把握し切れていない。チームにとっての不安材料」とコメントし、香川の日本代表参加に難色を示した。

 そのため、日本サッカー協会側も強行出場には及び腰にならざるを得なかったようだ。同協会の原博実技術委員長(53)は「試合前の午後3時までどうするか様子を見ていたが、彼にとって(腰痛は)初めてのことなので…」と説明。マンUへの配慮を示唆した。
 マンUは18日に開幕する欧州チャンピオンズリーグ(CL)を控え、新戦力の香川に大きな期待を寄せている。その矢先の腰痛発症だけに、原委員長は「ドクター同士で今回の経緯と事情を説明することになる。これからのスケジュールもあるし、無理させないようにした」。

 日本代表の目標はあくまでブラジルW杯本大会で、今後も期待のエースを日本代表に招集しなければならない。マンU側との関係悪化は招集の大きな障害になる。この日の欠場も腰痛を悪化させないための最善策。もちろん、香川もそんな事情を理解して従った…というところだろう。

 実際に協会関係者も「面倒くさいことが起こる前に対処した、ということなんじゃないか」。
 香川は重症ではないことを強調し、CLやリーグ戦出場(15日)にも意欲を示した。ただ、チーム内外に大きな禍根を残したのは間違いない。